一流企業に勤める「父親」の“過干渉”がトラブルの原因に…「中学受験で親子関係が破綻する」のはどんな家庭か
「信頼と心配」のバランスが重要
では、親が子に接する時の心得とは何か。 「『信頼と心配』のバランスです」 と、成田氏は説く。 「親は子どもが生まれると最初、100%『心配』し子育てをしていきます。それが発達の度合いに応じて、信頼に比重をかけていって、子どもから徐々に手を離していく。最終的に18歳で心配を0%、信頼を100%にするのが理想です。ですが、中学受験の時期にかかってくると、塾からの指導や“受験にはそれなりのお金がかかっているんだから”という金銭事情から親が中学受験にのめり込む。すると、それまで築いてきた子どもへの『信頼』を『心配』に戻してしまうんですね。“私がついていないとこの子は合格できない”と思い込んでしまうんです。これが過干渉の状態です」 成田氏が知る過干渉の実例で言うと、下記のようなものがあったという。 小学校6年生の男の子が夏期講習を今まで行ったことのない会場で受けることになった。息子は電車好きだったので一人で行きたいと主張するも、降りたことのない最寄り駅だったので、母親が「道を間違えたら大変だから」と会場までついていこうとし、最終的に押し問答の末、結局一緒に行くことに。実際向かおうとすると、混雑に巻き込まれ遅れそうになり、結局タクシーを拾って間に合った。ところが、これに息子が激怒。「お前が余計なことをしやがるから遅れてしまったんだ! どうしてくれるんだ」と車中で怒鳴りだしてしまった、というものだ。 「これは母親が子どもを信頼せずに心配ばかりしてしまったから起きたと言えます。心配は信頼していないことと同義、なんでもかんでも世話を焼くのは子を信頼していないことの裏返しなんです。すると子どもは親に信頼されない自分というものに自信が持てなくなってしまう。小学校高学年は自我が確立され、社会の中で自立していくための自信を身に付ける過程ですが、親からの信頼がないと子どもは“ダメな自分”を認識してしまうのです。すると不登校も起こりやすい状況になります」 後編「子どもがペットをいじめても叱れない親まで…過酷な中学受験で『親が奴隷になる』のを防ぐ処方箋とは」では親が過干渉になることで起きる親子の主従逆転、そうならないために親がとるべき“構え”を解説してもらう。
デイリー新潮編集部
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