「ナッツ姫」が6億円マンションを差し押さえられていた 「ナッツ・リターン」事件後の“凄絶転落人生”に迫る
経営に復帰するとの発表があったが…
ナッツ・リターンが大きく報じられた直後、趙氏は副社長を含むグループの全ての役職を辞任。さらに同年12月30日にはソウル西部地検により航空保安法違反と強要などの疑いで逮捕され、機上の人は一月足らずのうちに塀の中に落ちた。翌年5月に高裁で執行猶予付き有罪判決が下されるまで、実に140日超も拘束されたのである。 先の記者によれば、 「その後、しばらくは公の場に一切姿を現さなかったナッツ姫ですが、17年4月には、ソウル市内にある保育園で子供の世話をするボランティア活動を始めたことが報道されました。ただ、これも韓進グループの経営に復帰するためのイメージ戦略なのではと冷ややかに見られていた。当初は『育て方を間違えた』と反省していた父親も、次第に娘をかばう発言を繰り返すようになっていましたから」 実際、18年3月には趙氏がグループ会社の経営に復帰するとの発表が。これにより、ナッツ姫の人生は再び上昇気流に乗ったかと思われた。
「水かけ姫」疑惑
ところが、この復帰計画は一瞬のうちに水泡に帰してしまう。今度は大韓航空の専務だった趙氏の妹に、広告代理店の担当者に水をかけたという「水かけ姫」疑惑が発覚したのだ。 姉が姉なら妹も妹。だが、一族のトラブルはそれだけではなかった。同年5月には、姉妹の母親に対して逮捕状が請求されたのである。かけられた容疑は「家政婦や運転手、自宅改修工事の作業員らへの暴行・業務妨害など」だった。 「こちらも『作業員をひざまずかせて平手打ちをした上、膝を蹴る暴行をした』などといいますから、子どもたちの横暴も“育て方”以前の問題です。この他にもファミリーには『フィリピン人家政婦を違法に入国させた』『海外のブランド品を密輸入した』など立て続けに疑惑が持ち上がり、ナッツ姫も再び訴追されることになりました」
家庭内暴力で…
そんなさなかの19年4月、グループにワンマン会長として君臨していた父親が70歳で急死する。“瞬間湯沸かし器”ばかりのファミリーにお家騒動が勃発するのも必然の成り行きだった。 「父親の跡を継いで実権を握ろうとした弟にナッツ姫が『父の遺志に反する』と反発。株主を巻き込む大闘争に発展しましたが、ナッツ姫は母親と妹を味方につけた弟側に惜敗。父親の一周忌にも顔を出さず、家族との関係にも亀裂が入ってしまいました」 実は、ナッツ姫がお家騒動を起こしたのには切実なワケがある。それは、高額な相続税の問題だった。 「父からの相続にかかった税額は合計2700億ウォン(約270億円)ともいわれ、ナッツ姫一人だけでも600億ウォンに及びました。当然、一括で支払うことはできず分割払いになりましたが、それでも年間の支払い額は相当なもの。彼女が相続税を支払うためには、会社で要職につき、高額報酬を得るしか道はなかったのです」 立ちはだかった困難は相続税だけではない。 「ナッツ姫は10年に小学校の同級生だった美容整形外科の院長と結婚。双子の男の子をもうけましたが、18年にこの夫から離婚訴訟を起こされたのです。原因は彼女の家庭内暴力。耳を塞いで嫌がる子どもを、ナッツ姫が英語で叱りつける動画まで公開され、離婚訴訟は泥沼化しました。極め付きは、夫がナッツ姫を自分への傷害の容疑などで告訴したこと。彼女には罰金の略式命令まで下されたのです」 〈親権は妻に〉〈妻は夫に財産分与として13億3000万ウォンを支払う〉などの条件で離婚が成立したのは22年になってからのことだった。