開催中止 「受け止めるしかない」 花咲徳栄、選手ら真剣に /埼玉
「重く大きな判断」「受け止めるしかない」――。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、19日に兵庫県西宮市で開幕予定だった第92回選抜高校野球大会の中止が発表された。4年ぶり5回目、通算12回目の甲子園出場を決めていた花咲徳栄では、岩井隆監督が選手らに中止を伝え、選手らは真剣な表情で監督の言葉をかみしめていた。県内の関係者や野球ファンからは、選手らを励ます声が広がった。【平本絢子、清藤天】 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 ◇野球ファン 残念/無観客でもプレーさせたかった 選手らは午後6時ごろ、野球部の「水仙寮」のミーティングルームに集められた。「日本高野連から発表があり、今回のセンバツは中止になりました。ベスト4、日本一という目標があったが、それ以上に重いことが起きていると理解してください。夏に向かってタフにやっていきましょう」。岩井監督は落ち着いた語り口で選手らに告げ、選手らは終始、真剣な表情で耳を傾けていた。 岩井監督はその後、取材に対して「そういうこと(中止)があり得ると覚悟はしていたが、複雑な心境。日に日に情勢が悪くなる中、開会式や甲子園練習の中止など、連盟や主催者にぎりぎりの努力をしていただいていることが分かった。連盟も重く大きな決断を下されたと思っている」と受け止めを語った。 選手らに対しては「この経験で甲子園に重いものがあると分かってくれれば。大人になって経験、体験として語れるようになった時にプラスになる」と望んだ。 井上朋也主将(2年)も取材に応じ、「(中止を)聞いてすぐは動揺した。中止されることは一切考えず、やると信じて練習してきた。チーム全体で受け止めるしかない」と落ち着いた様子で話した。また後輩らに対しては「秋から目標としてきたセンバツが無くなり、初めて出場する選手が一番悔しいと思う。その子たちのためにも、夏にもう一度甲子園に行けるようにしたい」としっかりとした口調で語った。 ◇知事、加須市長「夏を目指して」 高野連の中止決定について、大野元裕知事は「日々変化する国内の感染状況などを総合的に踏まえ、苦渋の決断であったと思います。選手の皆さんは気持ちを切り替え、夏の大会に向け練習に励んでください」とのコメントを発表した。 地元・加須市の大橋良一市長は「選手や関係者の方々の心境を思うと残念で仕方ありません。しかし、選手の皆さんが前を向き、夏の甲子園を次の目標として新たなスタートを切っていただくことを強く希望します」とのコメントを出した。 野球ファンからも惜しむ声が上がった。甲子園出場経験がある強豪校のエースだった所沢市の男性会社員(56)は、中止の一報を聞き「あーっ」と絶句。「出場校は期待して準備を進めていたと思う。中止ならここまで引っ張る必要はなかったのでは。残念だが、モチベーションを維持してほしい」。元高校球児の同市の男性会社員(42)は「甲子園は球児にとって聖地。無観客でもプレーさせてあげたかった」と残念そうだった。