勤労者皆保険と新NISAは「国民年金の第3号被保険者」を廃止に導く
社会保険の適用拡大の先にあるのは勤労者皆保険
厚生労働省の審議会での議論を受けて、従来よりも社会保険に加入しやすくなる新基準が、2016年10月からスタートしました。 この新基準は社会保険の加入者を増やす方向で何度か改正され、現在は次のような5つの要件をすべて満たすと、社会保険に加入するという内容になっています。 ・ 1週間の所定労働時間(契約上の労働時間)が20時間以上 ・ 賃金の月額が8万8,000円以上(年収だと約106万円以上) ・ 2か月を超えて雇用される見込みがある ・ 学生ではない ・ 従業員数が101人以上(2024年10月からは51人以上に引き下げ)の企業、または社会保険への加入に関する労使の合意がある101人未満の企業で働いている 今後も新基準は社会保険の加入者を増やす方向で、改正が繰り返されていくと推測されます。 そして最終的には岸田総理が実現を目指している、勤労者皆保険(雇用形態や勤務時間に関わらず、働いている全員が社会保険に加入する制度)に行き着くのです。 ここまで行けば第3号被保険者は大幅に減っているので、仮に政府が廃止や縮小を発表しても、国民からの反対意見は出にくいと思います。 こういった点から考えると、社会保険の適用拡大の先にある勤労者皆保険は、第3号被保険者を廃止に導く制度なのです。 なお従業員が社会保険に加入した場合、企業は保険料の半分を負担する必要があるため、社会保険の加入者が増えるほど、企業の負担は重くなるのです。 そのため勤労者皆保険を実現していくためには、企業の協力が不可欠になると思います。
インフレは外国人労働者の生活にも悪い影響を与えている
諸外国の中央銀行はインフレを抑えるため、2022年の前半辺りから政策金利(中央銀行が誘導目標にする金利)の引き上げを始めました。 一方で日本の中央銀行である日本銀行は、マイナス金利政策という短期金利の上昇を抑える金融政策と、YCCという長期金利の上昇を抑える金融政策を、現在も継続しているのです。 これにより金利の低い円を売って、金利の高い外貨を購入する動きが加速したので、数十年ぶりの円安になっているのです。 円安が進行していくと、海外から輸入する原材料の価格などが上昇し、それが商品の価格に転嫁されるため、日本国内でインフレが進みます。 また現在はインフレによる物価上昇に、給与の上昇が追い付いていないため、生活が苦しいと感じる方が増えているのです。 日本で働く外国人労働者にとっては、円安が進行すると母国に送金できる金額が減ってしまうため、日本人だけでなく外国人の生活にも悪い影響を与えているのです。