「安全登山の要」大改修 国内唯一の国立施設・立山の研修所 スポーツ庁など4年計画
●児童の体験設備も設置 スポーツ庁などは、国内唯一の登山研修施設である国立登山研修所(立山町芦峅寺)の機能強化に着手した。開所から半世紀がたち、老朽化も進んでいることから、今年度から4年計画で各施設を改修する。登山ブームを背景に山岳事故も多発しており、施設を「安全登山の要」と位置付け。全国から登山関係者が集う施設として生まれ変わらせ、安全に楽しむ登山の普及を図る。 【写真】新たなロッククライミング訓練施設の模型を紹介する米山所長=立山町の国立登山研修所 計画はスポーツ庁と、研修所を所有、運営する日本スポーツ振興センターがまとめた。今年度、スポーツクライミング用人工壁などがある屋内トレーニング室や、屋外のロッククライミング訓練施設などを改修する。 トレーニング室では、クライミング用人工壁を拡充するほか、新たにボルダリング用の壁も設置。クライミングに比べて、入門編となるボルダリングも行えるようにすることで、小中学生も体験できるようにする。研修所の米山隆所長は「子どもたちへの登山知識の普及啓発にもつなげたい」と話す。 ロッククライミング施設も立山の岩壁の特徴なども踏まえ、より実践的な訓練が行えるようにリニューアルする。いずれの施設も年度内に改修を終え、来年度から使用できるようにする。 ●冬山基地の移転検討 研修所は全国の自衛隊、警察、消防などの山岳救助に当たる担当者、山岳ガイド、大学の登山部などで指導に当たる教職員ら、安全な登山を行う上で中心となる人材の研修を行う。 特長的なのは、実際の山岳に登山拠点を持つ点だ。剱沢にある夏山前進基地(標高2450メートル)と、冬季しか行くことができない冬山前進基地(同1310メートル)がある。この拠点を利用して、実地研修を行えるのが強みとなる。 冬の大日岳の登頂を目指すベースキャンプとなる冬山前進基地は、過酷な積雪で建物全体が傾いて危険な状態にあるため、昨年から使用禁止となっている。現在地は、近年の気候変動の影響で雪崩が起きやすいエリアにあるため、移転して新築する方向で検討を進める。同程度の標高帯の別の山に整備して、より安全に訓練できるようにする。 来年度以降は本館の宿泊室などの改修も進め、利便性を高めていく計画。研修所の開所以来、初の大改修となる。米山所長は「コロナ禍以降も遭難事故が高止まりしている。登山関係者の知識や技能について全体の底上げを図っていきたい」と話した。 ★国立登山研修所 1967(昭和42)年に文部省登山研修所として開所。国内唯一の登山専門の国立施設として、登山指導者の養成や登山に関する情報発信を担う。約70人を収容できる宿泊室などを備えた本館のほか、トレーニング施設や夏山前進基地、冬山前進基地も運営する。