大根と待乳山親方、実は「待乳山」が結んだ不思議な縁でつながっている
◇記者コラム「Free Talking」 相撲部屋の「ちゃんこ」に欠かせない食材といえば大根。藤島部屋では部屋付きの待乳山親方(元幕内武州山)が、いただきものの大根を部屋に持参するため不自由することがない。 待乳山親方と大根。実は「待乳山」が結んだ不思議な縁でつながっている。待乳山親方は2013年1月に引退。小野川の名跡で日本相撲協会に残った。当時、東京都荒川区東日暮里に部屋を構える藤島部屋の近くに住んでいて、浅草が散歩コースになっていた。 いつものように散歩していると、目に留まったのが大根(消化を助ける働きがあることから身体健全・家内安全)と巾着(商売繁盛)を御利益のシンボルとする「待乳山聖天」だった。 「待乳山」が大相撲の名跡にあることは知っていた。だからといってそれほど意識はしていなかったが、前を通れば参拝するようになった。 そこでばったり会ったのが、親方と藤島部屋を昔から応援してくれている東日暮里4丁目の町内会の方だった。 待乳山聖天の職員もしている町内会の方に「すごいところだから」と言われ、時間があれば参拝に足を運んだ。「まさか待乳山の名跡を継承できるとか、そんな気持ちは全くなかった」と親方。それでも、導かれるように待乳山名跡継承の話が舞い込み、3年前に正式に襲名した。 浅草寺の支院である待乳山聖天は1400年以上前に開山。平田真純住職によると、浅草寺は土師真中知命(はじのまつちのみこと)がその土台をつくったという。待乳山の「まつち」は、そこに由来するとも言われている。 土師氏といえば相撲の祖とされる野見宿禰(のみのすくね)の末裔(まつえい)。「そういうところで(相撲に)縁があるのかなあと思っています。例え後からつけたにしても、ゆかりがあっていいなあと思います」と平田住職は話す。 相撲の神様が結んでくれた縁だったのか。「御袈裟(けさ)授与式」に出席する待乳山親方に同行させてもらい、私も縁起のいい大根を1本いただいて帰った。(大相撲担当・岸本隆)
中日スポーツ