「血便」の症状が表れたときの深刻さとは? 医師が原因も解説
血便と深刻度の関係
編集部: そのなかで、特に危険なものはありますか? 小田木先生: 特に気をつけたいのは、暗赤色便が出る大腸がんです。 大腸がんは近年患者数が急増しており、厚生労働省が2023年9月に公表した「2022年の人口動態統計(確定数)」によると、現在、日本における大腸がんの死亡数は、男性では肺がんに次いで2位、女性では1位を占めています 。 「まだ若いから」といって油断せず、早めに内視鏡検査を受けるようにしましょう。 編集部: 大腸がんの場合、出血量は多いのですか? 小田木先生: いいえ、場合によっては出血量が少ないこともあり、見逃しがちです。また、必ずしも暗赤色ではなく、鮮血が混ざることもあります。血液の色はがんができる場所によって異なり、肛門に近い直腸がんは鮮血、結腸がんは黒色の便が見られることが多いとされています。 編集部: ほかに気をつけた方がいい血便はありますか? 小田木先生: 血便ではなく下血に分類されますが、黒色便(タール便)が見られた場合にも要注意。この場合には胃がんや胃潰瘍、十二指腸潰瘍などが疑われます。早めに胃の内視鏡検査を受けることをおすすめします。 編集部: そのほかに、気をつけた方がいい症状は? 小田木先生: 潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患や、虚血性腸炎、憩室出血、大腸ポリープなど、さまざまな疾患が血便を引き起こします。 これらの場合には暗赤色の血便が見られることが多いとされていますが、たとえば、憩室出血や虚血性腸炎のように、鮮血の混ざった便が見られることもあります。色だけで判断するのではなく、血便が出たら念のため、早めに受診することが大切です。
血便が出たら? いざという時に慌てないために
編集部: 血便が出たらどうしたら良いでしょうか? 小田木先生: まずは出血した時の状況をメモしておくことをおすすめします。 「血液は便に混ざっていたのか、それともトイレットペーパーについた程度なのか」「血液の量は大量だったか、少量だったか」「血液の色は黒ずんでいたのか、鮮血だったか」「血便は繰り返したか、それとも1回だけか」「粘液は混ざっていたか」「腹痛や下痢などほかの症状はあったか」といったことを記録しておくと、診察時に役立ちます。 また、「過去に血便が見られたことがあったか」なども診察時に伝えましょう。 編集部: メモをしておくのがいいのですね。 小田木先生: あるいは、血便の様子をスマートフォンなどで写真を撮影しておくと良いと思います。色や粘液の状態などを確認しやすく、診察がスムーズになります。 編集部: 血便が出た場合は何科を受診すれば良いでしょうか? 小田木先生: 消化器内科を受診することをおすすめします。場合によっては内視鏡検査を行うことも多いので、そういった検査設備を整えている医療機関を受診すると便利です。 編集部: 内視鏡検査のほか、どのような検査が行われますか? 小田木先生: 大腸や胃の内視鏡検査のほか、痔が疑われる場合には肛門科にて肛門鏡の検査を行うこともあります。 編集部: 肛門鏡の検査を行うこともあるのですね。 小田木先生: はい。もしかしたら痔による出血かもしれないので、その可能性を排除するために肛門鏡の検査を行うこともあります。ただし、痔であることがわかっても、大腸などに原因がないわけではないので、肛門鏡の検査に続いて大腸カメラを行うことも必要です。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 小田木先生: 「一度、血便が出ただけだから」「少量だから」などといって検査を受けずに済ませてしまう方も少なくありません。しかし、血便が出たということは、体内のどこかで出血が起きているということであり、もしかしたら重篤な疾患が隠れているかもしれません。 大腸カメラは頻回に行う必要はなく、一度検査を受けて異常が見つからなければ、その後は5年に1回程度の頻度でも問題ありません。疾患の可能性がないことを確認し、安心するためにも、血便が出たらまずは一度大腸カメラを受けることを強く推奨します。