ロシア国民がいまだにプーチンを支持する「本当の理由」…「クレイジーな男」が熟知する《大衆の不安》とは?
終わりの見えない戦争、民主主義も言論の自由もない社会……。それでも大多数のロシア国民は、今なおプーチン大統領を支持しているという。テレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」のメインキャスターで、著書『日本人にどうしても伝えたい 教養としての国際政治』を上梓した豊島晋作氏が、日本人には想像もつかないその理由を深堀りする。 【写真】プーチンは「焦ってる」…ロシアで起きている「3重苦」の危ない正体
「社会の秩序」が何より大事なロシア国民
前編記事で指摘したように元ロシア政府高官が「クレイジーな男」と呼んだプーチン大統領は侵略戦争を遂行し、今のところ権力の維持に成功しています。なぜ大多数のロシア国民はプーチンを支持するのでしょうか。 モスクワやサンクトペテルブルクなど教育や所得水準の高い大都市では、プーチンの長期独裁に反対する人は相当数いる模様ですが、全国レベルではプーチンは支持されています。 これは前著『ウクライナ戦争は世界をどう変えたか』にも書いた通り、ロシア人はナワリヌイのような反体制指導者が掲げる自由や民主主義といった社会正義よりも、なおプーチンが築いた「秩序」が大事だと考えているからです。 ソ連という国家の崩壊と大混乱を経験した多くのロシア国民にとって、たとえ指導者が独裁者でも、たとえ戦争を始めても、国際的に孤立しても、社会の「秩序」が維持されていることが最も重要なのです。 ロシア国民はソ連共産党の一党独裁やスターリン支配に数十年も耐え、一九九〇年代の経済崩壊にも耐えてきた人々です。彼らから見れば、現在のロシアはプーチン大統領の指導力のもとで崩壊を免れているのです。 国家の崩壊を防ぎ、社会を安定させているプーチンを支持することは、もはや「当たり前」なのです。あたかも国歌を歌うような「儀式」だという指摘もあります。 何よりプーチンに代わる指導者を見出せないことが大きいでしょう。つまり亡くなったナワリヌイを新たなロシアの指導者として認めていた人は、全国レベルで見ればほとんどいなかったのです。