なぜ東洋太平洋&日本ミドル級2冠を達成した竹迫司登はニコリとも笑わなかったのか?
チャーリーが接近戦を挑んでくる展開は想定していた。王者の入り際に「右アッパーから左ボディ」のコンビネーションを合わせる戦略や、「腰に手を回して、右手で肩を押して距離を作る」などのボディワークを磨き、対策を練ってきた。押し負けないようにパワー自慢で、この日、見事はTKO防衛を果たしたWBOアジアパシフィックスーパーウエルター級王者の井上岳志と接近戦限定のスパーリングも敢行した。それらの準備は役には立ったが決め手にはならなかった。過去17戦を戦い一度のKO負けもないチャーリーはしたたかだった。 「押してとか、引いてとか、色々やろうとしたが、腕が絡められて振り払えなかった。そこが課題。あそこで嫌な思いをさせないとダメ。そこが僕の甘いところ」 竹迫は13戦無敗を守ったが、キャリアで初めて勝利をKOで飾ることができなかった。。 試合後、母親の誕生日にバースデー勝利を捧げることができなかったことを悔やんだチャーリーは、「ただ倒したかっただけ。途中のポイントは気にしなかった。ミドル級だし、勝つにしろ負けるにしろ面白い試合がいい。向こうが強いから向こうが勝った。彼がチャンピオン。やりにくかった」と、新王者をリスペクトしたが、「竹迫に威圧感は感じなかった」とも言った。 「竹迫のパンチ? あんまりないっすね。今までで一番体重が軽い相手。俺は74キロくらいで(リングに上がり)、いつも78キロ以上に戻してくる相手だったからね。竹迫よりも秋山泰幸、大尊康輝の方がでかかった。楽に試合できたと言えばウソになるが、いつもより重圧、威圧感は感じなかった」 72.3キロで計量をパスしたチャーリーは約1.7キロを戻しただけでリングに上がった。ミドル級のリミットは72.5キロ。たいていの相手は、計量後、5、6キロは増量してくるのだが、実は、竹迫も約3キロほどの増量しかできていなかった。 今回、竹迫は減量方法を少し変えて臨んだ。前回は、直前に1.5キロの水抜きをして体重を落としたが、今回は倍の3キロの水抜きをした。糖質を取りながらの水抜きなら、3キロを一気に落としてもリカバリーに問題はないと聞かされていたが、結果的に体重が想像以上に戻らなかったという。 「コンディション自体は悪いとは感じなかった」というが、チャーリーが感じた竹迫の軽さは、体重増の少なさと無縁ではなかったのかもしれない。 「今は、まだ試行錯誤。次は、また5、6キロを戻してみたい」と竹迫は言う。