トランプ氏、米大統領4年ぶり返り咲き 2人目“偉業”も「暴走政権」加速!? 注目は司法長官人事
米大統領選は5日夜(日本時間6日朝)に開票が始まり、米主要メディアは6日未明(同6日夜)、4年ぶりの返り咲きを狙った共和党候補ドナルド・トランプ前大統領(78)が勝利を確実にしたと報じた。勝敗の鍵と言われた激戦7州を次々と制した。報道を前にトランプ氏は、フロリダ州の集会場で早々に勝利宣言。「再び米国を偉大にする」と訴えた。民主党候補カマラ・ハリス副大統領(60)は初の女性大統領を目指したが、及ばなかった。 午前2時25分、数千人の支持者の前に、トランプ氏がメラニア夫人(54)、息子のバロンさん(18)らと登場した。湧き起こる「USA」コール。トランプ氏は満足そうな表情で「第47代大統領に選ばれたことを名誉に思っている。米国に黄金時代がやってくる」とスピーチした。 ほとんどの米大手メディアが“確定”を報じない中での勝利宣言。再選を目指して敗れた大統領が4年後に当選したのは、米歴史上、1892年の第24代グローバー・クリーブランド以来、132年ぶり2人目。「歴史的に偉大なことをやり遂げた。びっくりしただろ?」とおどけてみせた。 1期目に意見が食い違う政権幹部らを次々と解任していったトランプ氏。最後となる2期目の人事では服従する人物で脇を固めるなどするとみられ、周囲の忠告というブレーキのない「暴走政権」になると危惧する声が上がっている。 大統領選と同時に実施された連邦議会選では、共和党が上院で4年ぶりに多数派を奪還。上院は閣僚などの人事承認権を握るだけに、イエスマン登用人事が進み、暴走がさらに加速しそうだ。下院でも過半数の議席を獲得すれば、ホワイトハウスと上下両院を共和党が押さえる「トリプルレッド」となり、独裁色がさらに濃くなる。 人事で注目されるのが司法長官。米国内では「刑事被告人であるトランプ氏が、担当検察官の解任や起訴の取り下げを狙っている」との見方があり、1期目に任命し自身の機密文書持ち出し事件の起訴を棄却したフロリダ州連邦地裁のキャノン判事が、候補の一人として報じられている。 目の敵にしているのは、起訴された議会襲撃事件などを担当するスミス特別検察官。文書持ち出し事件では裁判の復活を求めて上訴。10月末の保守系ラジオ番組で、再選を果たした場合は「2秒でクビにする」と吠えていた。スミス氏の人事権を持つのは司法長官。司法省幹部ポストもイエスマンで埋めれば、解任にとどまらず、起訴取り下げまで可能とみられている。 「返り咲きの目的は有罪の回避」とも言われてきたトランプ氏。ハリス陣営はスミス氏解任論について「自らを法を超えた存在だと考えている」と非難。「核のボタン」をも握る大統領の「暴走」の果てにどんな事態が待ち受けているのか。来年1月20日に第47代大統領として就任式に臨む。「トランプ劇場」最終章の行方を世界が固唾(かたず)をのんで見守っている。 ≪控訴確実“不倫口止め”有罪事件≫ 4事件で起訴されたトランプ氏。不倫相手への口止め料を巡る業務記録改ざん事件は有罪の評決が下され、今月26日に量刑が言い渡される予定だが、控訴は確実。実刑となった場合の収監可能性については、初犯で高齢であることから低いとみられていた。憲法では、大統領になるには犯罪歴が制約になるとは書かれていない。 前回大統領選でジョージア州の結果を覆そうとしたとされる事件は裁判が先送り。弁護団は多忙な大統領が出廷すれば職責を全うできないとして、2期目終了まで公判を延期するよう求めている。 ≪銃撃事件言及≫トランプ氏は勝利演説で、7月13日のペンシルベニア州で演説中に銃撃を受けたことにも言及した。「たくさんの人が“神があなたを助けたことには意味がある”と言ってくれた」と話した。銃弾は右耳をかすめ、トランプ氏は流血しながらも観衆に向かって拳を突き上げた。9月15日にはフロリダ州のゴルフ場でプレー中、銃を持って茂みに潜んでいた男が警察に確保されている。 ▽米大統領選 米国の正副大統領を決める4年ごとの選挙。形式上は間接選挙で、全50州と首都ワシントンに割り当てられた大統領選挙人計538人の過半数270人の獲得を競う。選挙人はどの大統領候補を支持するかを事前に表明しており、有権者は大統領を直接選ぶ感覚で投票する。各州で勝利した候補がその州の選挙人を独占する「勝者総取り」が原則で、全米の総得票数で勝っても落選する場合がある。