アメリカではそうはならない…「新しい年」が景気回復のきっかけになる国、日本【解説:エコノミスト・宅森昭吉氏】
現状、日本の景気の谷は87.5%の確率で「寒い時」
景気拡張期間の長さが話題になることがよくあり、長めの景気拡張期間にはニックネームがつく。高度経済成長期の1965年(昭和40年)10月を谷とし、1970年(昭和46年)12月を山とする57ヵ月の景気拡張期間は「いざなぎ景気」と呼ばれている。 2002年(平成14年)1月を谷とし、2008年(平成20年)2月を山とする73ヵ月の景気拡張期間は「いざなみ景気」と呼ばれている。景気拡張期間は最も長いものの、景気回復の実感が乏しいといわれた。 2012年(平成24年)11月を谷とする「アベノミクス景気」は“いざなみ景気超え”が期待されたが、その山は2018年(平成30年)10月で、拡張期間は71ヵ月にとどまり、最長更新には至らなかった。 現在は、2020年(令和2年)5月を谷とする第17循環の拡張期間にある(図表1)。 これまでの景気の谷(計16回)は、1958年(昭和33年)とコロナ期の谷の2020年(令和2年)の2回は4~6月期だったが、あとは10~12月期が9回、1~3月期が5回と、87.5%の確率で寒い時が多い(図表2)。 米国における景気の谷は、日本と同じ戦後期間では13回ある。そのうち4~6月期に谷となったのは4回、7~9月期は1回、10~12月期は5回、1~3月期は3回である。寒い時に景気の谷になる確率は61.5%で、日本のような差はない。 日本人は春夏秋冬の四季を感じやすく、季節の節目節目を大切にしているように思われる。10~12月期および1~3月期に景気の谷が多いということは、新しい年が始まる、また4月からの新年度が始まるということが人々の気分を新たにさせ、景気回復のきっかけになっているのかもしれない。 宅森 昭吉 景気探検家・エコノミスト ESPフォーキャスト調査委員会 委員 ほか
宅森 昭吉