フリマサイトで注目を集める「呪文や魔法」オカルトサービスの実態、米国
米国のオンラインマーケットプレイス、Etsy(エッツィ)は長年、「物理的実体がない商品やサービス」の出品を禁じてきたが、時価総額が60億ドル(約8500億円)を超える同社のプラットフォームには、数千件もの呪文や魔法、呪いなどのオカルトめいたサービスが出品されている。 2021年にエッツィで魔法の販売を始めた「Nick the Alchemist(魔法使いのニック)」を名乗るセラー(販売者)は、わずか数ドルを払えば金持ちになれたり、異性にモテたり、有名インフルエンサーになれたりする「シジル」と呼ばれる紋章を販売している。彼の出品ページには、顧客たちがつけた5つ星の評価が並んでいる。 彼は、エッツィでこれまで約10万ドル(約1400万円)を稼ぎ、ミシガン州のホームセンターの仕事を辞めることができたと語っている。現在28歳の彼は、以前から起業家に憧れていたが、オカルトや精神世界にも興味があったという。 「エッツィを始める前は、ドロップシッピングやウェブサイトの製作などの多くのことを試したが、どれもうまく行かなかった。けれど、このビジネスはうまくいった」と彼は語った。 世界でたった一つのハンドメイド商品が買えるEコマースサイトのエッツィには、アクティブなセラーが約900万人も参加しており、あらゆる物が揃っている。しかし、同社を長年悩ませているのが魔法使いのニックのような出品者たちだ。 エッツィは、四半期ごとの財務報告に魔法や呪文に関する項目を設けていない。しかし、これらのサービスを提供している販売者とのインタビューや大まかな試算で、同社は数百万ドル相当のこの手のサービスの販売を促進していると推測可能だ。また、一部の人気の販売者は、数十万ドルを稼いだと試算できる。 ここで指摘しておきたいのは、エッツィの競合にあたる他のプラットフォームが「物理的実体がない商品やサービス」の出品への対処にさほど苦慮していないことだ。アマゾンにも魔法関連のアイテムは出品されてはいるが、呪文や呪いの出品を見つけるのはほぼ不可能だ。また、eBayにも呪文の出品はいくつかあるが、エッツィに比べればはるかに少ない。「当社は、呪文や魔法などの購入者の受け取りが確認できないアイテムの販売を禁止している」とeBayの広報担当者はフォーブスに語った。 エッツィで販売されているほとんどの呪文には、「娯楽目的のみで提供されている」という免責事項が付いており、これにより法的には多くの州でその呪文に効果がなくても詐欺には問えないことになる。さらに、同社はこれらのアイテムをプラットフォームの仲裁システムから除外しており、多くの販売者は返金を行っていない。 ■上場企業に問われる「道義的責任」 米ナスダックに上場するエッツィは、2015年以降に魔法や呪文、呪いや祈祷などの「物理的実体がない商品やサービス」の販売を公式に禁止している。しかし、これらの用語のいずれかやそれに類する用語を検索すると、少なくとも20ページの結果が表示される。その中には、115ドル(約1万6000円)で販売中の「黒魔術の破壊の呪文」や、5つ星の販売者による「テレポーテーション(瞬間移動)のための呪文」もある。