会社の会計の超キホン…「黒字なのに倒産する企業」「債務超過でも倒産しない企業」の違いとは?【経済評論家が解説】
債務超過でも倒産しない企業もある
銀行から100万円借りて設備機械を買った借り手が赤字になり、銀行へ「債務超過なので借金をすべて返すことができない」と連絡したとします。 銀行は「それならすぐに会社を解散しろ! 資産をすべて売って返せるだけ返せ!」と迫ることも可能ですが、「しばらく待ちますから、返せる時に返せるだけ返して下さい」ということも可能です。 強引に取り立てて借り手が倒産すると、「あの銀行は冷たい。あの銀行と付き合うのはやめよう」と多くの企業が考えて顧客が減ってしまう、ということもありますが、じつは、返済を待ったほうが銀行の利益になる場合もあるのです。 ひとつは、会社が黒字を回復して全額返済できるようになる可能性に賭ける場合です。買ったばかりの設備機械でも、スクラップ業者に二束三文で買い叩かれてしまう可能性が高いので、それよりは回復の可能性に賭けよう、という選択は十分あり得るでしょう。 しかし、回復の見込みが皆無だとしても、待ったほうがいい場合も少なくないのです。 100万円の設備機械を10年で減価償却するとすれば、毎年10万円になります。10万円の材料費と10万円の減価償却費に対して売上高が19万円しかない場合、企業は赤字になりますから、純資産が小さい場合には債務超過に陥るでしょうし、借金をすべて返済することは不可能でしょう。 しかし、19万円の売り上げに対して仕入れは10万円ですから、毎年9万円のキャッシュが手に入ります。これを使って返済させれば10年間で90万円が戻ってきます。設備機械をスクラップ業者に買い叩かれるより、10年待ったほうが銀行の利益になるのです。 もっとも、銀行は債務超過の会社に金を貸していると手間がかかりますので、手間を考えて「損を承知」で急ぎ回収する場合も少なくありません。100万円貸してある場合は急いで回収し、100億円貸してある場合は手間をかけても多く回収する、といったことが起き得るわけです。別に「大企業だから優遇している」というわけではなく、手間をかけても見込める回収額が多いから待つのです。