政治家主導で官僚の人事を動かす「内閣人事局」ってなに?
安倍首相のおひざ元である内閣官房に5月末、「内閣人事局」という新しい組織が誕生します。これは、国の省庁の幹部の人事をまとめて管理する役割を担います。どうして今、このような組織が発足したのでしょうか? 国には、財務省や経済産業省など1府12省あります。内閣人事局では、それぞれの省庁ごとの事務次官や、その下の局長、審議官などの人事を行います。民間企業でいえば、大臣を社長とすると、事務次官は取締役クラス。その下の局長、審議官は役員クラスに該当する、と例える人もいます。対象人数は全体で約600人。約56万人の国家公務員を引っ張るリーダーたちです。 この組織の狙いは、官僚の人事を決めるに当たり、首相をはじめとする政治家の関与を今までより強めることです。官僚は、採用の段階から省庁別々に行われているため、どうしても縄張り意識が生まれやすく、「国益よりも省益を優先しているのでは?」という指摘が以前からありました。内閣人事局によって「目指すべきは、ゼッケンを外して国益のために働く官僚」(稲田朋美・公務員制度改革担当大臣)というわけです。 日本では、国のかじ取りは官僚が担い過ぎていて、「政治家がもっと官僚を主導するべきだ」という声も根強くあります。組織を操るのは、人事です。表向きは、今も昔も大臣に人事権はありますが、実は省庁の人事は、官僚たちが決め、それを大臣が追認するのが慣例となっていたのです。 2001年~2006年で5年半続いた小泉内閣は、長期政権となったため、大臣の在任期間も当然長くなり、政治家の官僚に対する指導力も自然と上がりました。ですが、その後は首相が毎年のように交代。大臣もころころかわっては、力が振るえません。2009年に誕生した民主党政権も「政治主導」をアピールしましたが、うまく行きませんでした。安倍政権では、厚生労働省の村木厚子事務次官など、これまでの慣例を打ち破る人事を実行しましたが、例はそう多くはありません。 今回、政治家が人事への関与を深められる「しくみ」ができたことは意義があります。内閣人事局は、幹部クラスになれそうな人の情報を各省庁や大臣らから受けたのち、それぞれの人事評価などを勘案しながら、候補者のリストを作成。これを元に、首相や官房長官、大臣らが話し合い、各省庁の人事を決めていくのです。 省庁の内向きな人事を断ち切り、大局的な視点で行動できる省庁幹部を政治家が選ぶしくみをこれから根付かせられるか?政治家を選ぶ国民も、意識を新たにする必要がありそうです。