カーボンニュートラルとはそもそもなに? EVや水素燃料やe-fuelを使えばいいってもんじゃない難しい課題だった
まだまだ問題が山積みだ
この素朴な発想に応えた内燃機関が現状、ふたつばかり考えられている。ひとつは、トヨタが積極的に開発を推し進めている水素燃料だ。水素の化学式はH。炭素が含まれないので燃焼によって炭素化合物(二酸化炭素、一酸化炭素、炭化水素)が発生することはない。厳密にいえば、大気によって水素を燃焼させるため、吸い込んだ二酸化炭素をそのまま排出することになるが、これにより大気中の二酸化炭素は増えも減りもしない。ゼロカーボンというか、燃焼によって炭素化合物が増えることはない。カーボンニュートラルといういい方をしてもよいだろうか。 ただし、水素燃料という考え方は、電気モーターを動力源とするEVの電源として使われる燃料電池の存在もある。電池内に収蔵された酸化剤に水素を補給することで化学反応を起こし、この反応によって電気を起こし(発電)、モーターの電力として供給するシステムである。フューエル・セル、燃料電池車とも呼ばれるが、じつは大型商業車などで実用化が進められている方式で、現在、ゼロエミッション車のひとつの柱になりつつある方式だ。大ざっぱにいえばEVの一形態で、電力供給源となるバッテリーが充放電式なのか、それとも水素を補給しその化学反応で電力を供給する方式なのか、の違いである。 もうひとつが合成燃料だ。英語でe-fuelと表記される合成燃料は、大気中の二酸化炭素と水素を合成し、化石燃料と同種の燃料を作り出そうとしたものだ。合成燃料については、2023年3月ドイツの国会でその使用が承認された燃料である。ドイツ自動車メーカーの強い申し入れにより、EV以外にその使用が認められた方式である。 合成燃料は、大気中の二酸化炭素と水素を合成して作られる。燃料を燃焼して排出される二酸化炭素は、もともと大気中にあったものであるため、大気中の二酸化炭素量はプラスマイナスゼロ、カーボンニュートラルという考え方が成立することになる。 EVはバッテリーに充電する電気をどうやって発電するか、水素燃料はその取り扱いと生産・供給方法、合成燃料は水素にさらに二酸化炭素を合成しなければならず、その生産施設、生産量をどうやって確保するかといった現実的な問題が厳然として存在する。 自動車の走行方式として、どの方式も理論的には確立されつつあるが、問題は電気モーターの電力、あるいは内燃機関の燃料を、どうやって必要量確保するかにあるようだ。
大内明彦