なぜ義父母が「妊娠アウティング」? 日本独特の「ある習慣」が根源か
本人の同意なく、妊娠を言いふらす「妊娠アウティング」が、職場の問題として注目される中、SNSでは「義理の両親にも広まってほしい」という声が上がっている。どうして義父母によるアウティングが起こるのか―。家族問題評論家の池内ひろ美さん(62)=岡山市出身=にたずねてみると、根深い日本の「家意識」が背景として見えてきた。 【写真】家族問題評論家の池内ひろ美さん 「妊娠アウティング!絶対NGだよ。もっと認知されてほしい。職場もだけど義母界で広まって!!」 「手伝って欲しいところがあったから早めに義母に報告したら速攻でいろんな親族にLINEされて結果は流産」 「口止めしてたのに、いつの間にか親族も知人も全員知ってた」 Xではこのような投稿が見られる。家族に関わる相談を4万件近く受けてきた池内さんは「妊娠アウティングを含め、妊娠から出産までの間に義理の両親と何もトラブルがないほうが珍しい」と話す。 相談者の中には妊娠を言いふらされた挙げ句、流産したケースもあるという。「祖父母に悪意はないからこそ深刻な問題。めでたい、誇らしいとの気持ちで広めてしまう」と池内さん。「子育ての中で常に『見えない競争』をしている。子どもの学校、就職先、結婚…。その中で『孫』もステータスとしてとらえている」と述べる。 また、池内さんは日本独特の「ある習慣」が根源にあるとも考える。「かつては家庭で女の子が初潮を迎えると赤飯を炊き、子孫を残せる能力がついたとしてお祝いしていた。親戚や近所の他人にまで配る人もいた。そういう感覚が根っこにあり、『妊娠アウティング』はその延長線上にある」と語る。孫が家の「跡継ぎ」という考えも依然として根強く、「妊娠はプライバシーに関わることだけど、言いふらす側の言い分だと『跡継ぎの問題は公益性があり、プライバシーではない』という考えになってしまう」と分析する。 自身が受ける相談から、子どもを生まない嫁への風当たりの強さは、令和になった今でも続いていると感じている。「子どもがいない夫婦に対して、いまだに『まだなのか』とたずねたり、不妊治療を紹介したりするケースもある」とし、「この文化はなかなか変えることはできない。できることがあるとしたら、嫌な思いをした人たちが、自分はしないようにすることだ。職場や近所で妊娠を言いふらしている人がいたら、しっかりと止めてほしいし、しゅうと・しゅうとめ世代になった時には、気を付けてほしい」と呼びかける。