ホームレスは助け合うのか、それとも冷淡で孤独なのか...不思議な「兄弟分」の物語
非対称な関係? 斉藤さんのために尽くす桂さん
桂さんは斉藤さんのために無償で作業をすることが多いが、きちんと勘定をする場合もある。 例えば、彼らに会いに行ったとき、桂さんだけがテントにいた日があった。 桂さんは言った。 「斉藤さんの自転車が昨日パンクしたので、彼は自転車を私の所に置いて、今日、私の自転車に乗って競馬場に行きました。自転車を修理しましたが、彼はまだ帰っていません」 曹操の話をすれば、曹操が到着する(日本語で言えば「噂をすれば影」)。堤防の向こうから斉藤さんが自転車でやってくるのが見えた。 斉藤さんに会い、今日の競馬の運はどうだったかと聞くと、午後4時になったら結果が分かるという。その時、彼は家に座ってビールを飲みながらラジオで放送される競馬の結果を楽しみにするのだ。 斉藤さんの独りよがりな表情を見て、桂さんは文句を言った。 「いつもお金を持って出て行き、手ぶらで帰ってくる。結局、あなたはなんのために朝早くから夜まで一所懸命に働いているのか。私には理解できない」 「この趣味だけはやめられない。今日は負けたけど、明日また仕事を頑張って稼げばいいんだよ」。斉藤さんの答えは相変わらずの調子だ。 「あなたの自転車はもう修理して、チェーンにも油をさしておいたよ」。桂さんは話題を変えた。 「ありがとう!」 斉藤さんはそう言いながらポケットから千円札を取り出し、桂さんに渡した。桂さんは何も言わずに金を受け取った。 2人のやり取りを見て、私は首をかしげた。あなたたちは兄弟分ではないのか。どうして自転車の修理代を受け取るのか。読者の皆さんも同じ疑問を持つに違いない。
私が斉藤さんだったら、チップも渡しただろう
斉藤さんが去った後、桂さんが説明してくれた。 昨日、斉藤さんは自転車で缶を売りに行って、帰る途中にタイヤがパンクした。すぐに自転車を押して自転車店に修理に行ったが、店員に修理費の見積もりは5000円だと言われたという。 斉藤さんは高いと思って、修理しないことにしたという話を桂さんにしたそうだ。そしてパンクの状態を見て、桂さんが斉藤さんに言った。 「店で修理したら5000円でしょう。私に1000円払えば、自転車を修理してあげるよ」 斉藤さんは快諾し、その結果が先ほど見た場面だった。 桂さんが金を受け取った理由は十分にあると言えるだろう。 まず、修理代は双方が事前に約束したものなので、履行されなければならない。次に、桂さんは斉藤さんが4000円を節約する手助けをし、そのために労働と時間を差し出した。しかも斉藤さんに自分の自転車を無償で貸してあげた。 私が斉藤さんだったら、きっと1000円にチップを加えただろう。