「この内容通り、遺言書を書いて!」60代姉夫婦、90代の母に迫ったが…跡継ぎの弟の「素早い行動」が救った、母の窮地
新しい遺言書を作成すれば…
筆者と提携先の司法書士は、佐藤さんと一緒に母親が入所する施設を訪れ、直接話を聞きました。 佐藤さんの母親は〈姉夫婦に書かされた遺言書は不本意なものであり、自宅は佐藤さんに相続させたい〉とはっきり口にしました。 母親の意思確認ができたことから〈自宅は佐藤さんに相続させる〉という内容で、新たに遺言書を作成することになりました。 遺言書は新しく作ったものが優先されます。そのため、姉夫婦が作った遺言書ではなく、あとから作ったこちらの遺言書が優先されるので、本来の母親の意思が生かせるのです。
公正証書遺言がお勧めなワケ
しかし、自筆の遺言書は家庭裁判所の検認が必要であり、また、もし作成に不備があれば無効となり、姉が迫って作成した遺言書が有効になるなど、いろいろな懸念が残ります。 さらに自筆の場合、内容が有効でも、あとから「母親は認知症だった」として、無効の裁判を起こされてしまうかもしれません。 幸い、佐藤さんの母親には認知症の兆候はなく、意思も明確です。公正証書遺言にしておけば、いろいろな意味で安心だという話になり、速やかに作成の準備に取り掛かることになりました。 後日、佐藤さんとともに、公証役場の公証人と提携先の司法書士、筆者と事務所スタッフが、佐藤さんのお母さまが入所する施設を訪れ、姉には遺留分に抵触しない金額の預貯金、佐藤さんには自宅不動産と残りの預貯金を相続させるという内容で、無事に公正証書遺言が作成されました。 遺言書には付言事項として「そばで見守り、手を貸してくれた佐藤さんに自宅を継いでほしい」との母親の気持ちを書き添えることになりました。 「これで安心しました」 ほっと息をつき、安堵の表情を見せてくれたのは、佐藤さんのお母さまのほうでした。 「ずっと面倒を見てくれた息子に、約束通りの遺言が遺せてよかったです…」 佐藤さんも安心したのか、これまでの緊張した表情が和らぎました。 これにより、被相続人本人の意思を反映した遺言書を作成することができます。 今回は、佐藤さんが速やかに動いたことで、お母さまの意思を反映する遺言書を作成することができました。相続の準備は、被相続人に何かあれば、すぐに立ち行かない状況になってしまいます。速やかな行動が、納得できる結果へとつながっていくのです。 ※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。 曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士 ◆相続対策専門士とは?◆ 公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。 「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
曽根 惠子
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