テーマは“生きるとは?” 絵本作家・ヨシタケシンスケ「小さい子にきょとんとしてほしい」
■作品で「小さい子にきょとんとしてほしい」
2つ目のおはなし『メメンとモリと きたないゆきだるま』。メメンとモリが作ったゆきだるまが、晴れて溶けかかってしまい、2人は複雑な顔をしてゆきだるまを見つめます。しかし、ゆきだるまには意識があり、2人の顔を冷静に見ているところから始まる物語です。 ――実際に周りに起きた出来事や誰かから掛けられた言葉など、今回の作品に反映されているものはありますか? 雪だるまの話は、はっきりとした元ネタがあって、テレビを見ていたらニュース映像の端に汚い雪だるまがちらっと映ったんですね。イメージでは真っ白な真ん丸な、絵本みたいな雪だるまができると思ってみんな作るけど「泥だらけになっちゃうんだよな」というのを見て思ったんですけれど。でもよく考えたら「あの雪だるまはがっかりされているんだな」って思ったんです。生まれた瞬間にみんなからがっかりされて生まれてくるって「かわいそうだな」と思って。本の中に『だれもわるくない。だけど、だれも、しあわせじゃない。』というセリフが出てくるんですけど、誰も悪気があるわけじゃないんだけど、いろいろな事情で誰も望まない結果になっているという状況がたくさん世の中にもある。救いのない中でその人が何を考えることができるんだろうかっていう、世界をどういうものとして受け入れるということができるんだろうかという、それもやっぱり一つの選択肢みたいなものをあの話で出せたら、将来僕が汚い雪だるまみたいになっちゃった時に「ちょっと参考になるかな」みたいなそういう思いはありました。
――今回の作品はお子さんよりも大人の方に読んでほしい気持ちが強いですか? いろいろな方からご意見を聞いていても「うちの子はきょとんとしていましたよ」っていう「ですよね!」という感じで、お子さんにとってはなかなか難しい内容ですけど。僕は子供のころ好きだった本ってよくわかんなかったけど、でも何か気になる本っていうのは間違いなくあったんです。だから同じような現象が、自分が作る本で起きてくれたらうれしいなと思いがあるので、特に大人向けの本ではあるんですけれども、ちっちゃい子がぜひきょとんとしてほしいというか、何を言わんとしていたんだろうというふうに、ずっと疑問として残ってくれたらそれに越したことはないかなって思います。