捕手の送球が左肘直撃も 英明左腕「行かせてください」 センバツ
◇センバツ第2日(19日)2回戦 ○英明(香川)3―2智弁和歌山● 勝利がちらつき始めた英明の八回の守備で、予想もしない出来事が起きた。 【息詰まる接戦…英明vs智弁和歌山を写真で】 1点を返され、なお1死二、三塁。離塁が大きかった二塁走者を刺そうとしながら寸前でやめ、コントロールを失った捕手の返球が、マウンド上の左腕・寿賀弘都の左肘付近を直撃した。グラウンドに膝をつき、治療でベンチに下がった。 寿賀は球が当たった直後は痛みが強く、「投げられないかも」と感じた。しかし、治療しながら香川純平監督と交わした会話で奮い立った。「四球でもいいから強く腕を振ってこい」 寿賀は「(マウンドに)行かせてください」と直訴し、数分後にマウンドに戻った。痛みは残っていたが、「とにかく目の前の打者を抑える」と気持ちを強く持った。四球を出して満塁としたが、後続を断ち切った。 寿賀だけでなく、登板した3人は「強打の智弁」に正面からぶつかった。先発・下村健太郎は「同じ高校生。思い切ってやるだけ」と要所で内角を強気に攻めた。軟投派で横手投げの右腕は6回1失点の好投。試合後半は智弁和歌山の名物の魔曲「ジョックロック」が流れたが、「自分が応援されているみたいで、すごく面白かったです」と動じなかった。 大事を取って降板した寿賀に代わり、最後は2年生の左腕・百々愛輝が九回を締めた。「心の準備はできていた」と無死で得点圏に走者を許したものの、ホームは踏ませなかった。 香川監督は好投していた下村から寿賀に継投した。相手は名門の智弁和歌山で「逆転されたら厳しい。先手、先手で」と勝負手を打ったが、それも決まった形だ。 試合終了とともにベンチから飛び出し、互いに抱き合って喜びを爆発させた選手たち。3回目の出場でセンバツ初勝利をつかみ、学校の歴史に新たな一ページを刻んだ。【川村咲平】