『数分間のエールを』など制作 100studio代表・堀口広太郎に聞く、日本のCGアニメの進化
目指すのは「クリエイターを中心にして個性を大事にするスタジオ」
●スタジオ運営に一番大事なのは“人” ――100studioの規模拡大は、なかなかないスピード感ですよね。 堀口:勝手に自分はアニメ業界最速の立ち上げと言っていますが、プロジェクトを動かすために何が必要か考えて動いてきた結果こうなったという感じです。ありがたいことに、周囲からは急速に大きくなっていくことに価値を見出してもらえていると思います。 ――“スピード感”が最重要ということですね。 堀口:新しいスタジオは体制構築に時間かかるので、うちはスタジオの人数をKPIとし、速く成長することを意識していました。人数を増やすことにプラスになるようなお仕事は積極的にお受けしています。渡邉徹明監督と一緒に『ペルソナ3 リロード:エピソードアイギス』のオープニング映像を作ることになったとき、同作品が好きなアニメクリエイターに関心を持ってもらえて、人が集まり、今後につながる制作体制を構築できました。 ――今のアニメ業界は人材の取り合いで、どこも不足しているとよく言われていたり、自社でスタッフを確保しておかないと、制作ラインを維持できないわけですよね。そうした課題に向き合うためにも自社できちんとスタッフを抱えていくということですか? 堀口:おっしゃる通りです。スタジオ運営にとっては人が一番大事ですから。それが安定しないとしっかりとした経営基盤ができないです。急速に規模を拡大させてきたので、今は中途採用の業界経験者が主軸になっていますが、スタッフの育成については、経験者が若手を見ていくような仕組みを相談しながら作ろうと思っています。それと、台北やソウルに別拠点を作ることで小さいチームでやっていくというのも実践しています。各拠点のチームリーダーが他メンバーの面倒を見ていくような形を若手に対しては取りたいと思います。 ――教育機関との連携もされていますね。 堀口:韓国の清江文化産業大学校と産学連携協定の了解覚書(MOU)を締結し、卒業生を紹介していただいたり、教育プログラムの策定で協力したりなどを予定しています。他には台北芸術大学という美大の卒業生も100studioにジョインしてくれたり、国内でも大阪成蹊大学とも関係を深めたり、拠点を作るとその土地の教育機関と連携してもらいやすくなりますね。 ――新人教育については? 堀口:100studioではインターンの受け入れも積極的にやっています。仕事に慣れてもらって社員登用していくようにしたいと考えています。うちは、新卒の方に対して「一枚いくら」といった単価契約での業務委託契約を推奨していません。その分アニメーターの採用のハードルは高くしています。海外からの留学生ですとビザの関係もあるので、業務委託ではない方がいいですし、長期的な観点としては社員登用の方がいいですね。 ――今後、100studioがスタジオとして目指すビジョンはありますか? 堀口:クリエイターを中心にして個性を大事にするスタジオを目指しています。様々なタイプのクリエイターを抱えられるようになりたいですね。元請けとして年間に数本作れるようになり、安定した制作体制を実現して、その中でスタッフが成長できる環境を整えたいです。『数分間のエールを』はスタジオ初の元請け作品でしたが、オリジナルから始めることができました。これからは漫画原作の作品も積極的にやっていくことになると思います。その中で制作ラインを増やし、多様性も大切にすることで、世界にむけたアニメーション作品を皆さまにお届けします。
杉本穂高