「子の統合失調症は親が悪い」と言い切った医師は、はたして政治家として信ずるに足る人物なのか?
19歳で統合失調症を発症した娘さんのケアを10年以上、続けてきたことを告白した講談師の神田香織さん。わらにもすがる思いで助けを求めた医師から受けた仕打ちは今も忘れられないというが、その人物は昨今、政治の世界への野望を隠さないという。 【写真】講談師の神田香織さん
「子の統合失調症は親が悪い」
子どもの「統合失調症」。医者からこの病名を告げられると、親御さんたちは戸惑いながらも本やネットで情報を拾いまくります。とにかく子供ために何とかしてあげたいという気持ちで奔走するわけです。 そこで「精神薬は麻薬と同じような成分だ」とか、「薬をやめれば病気は治る」などという、薬害についての情報を得ると「断薬させなきゃ」と即座に反応する親もいます。私もその一人でした。 茨城県内にお住まいだったある医師が強い筆致で薬害についての本を何冊か出しておられ、目にした瞬間に「そうなのかっ」と引き込まれました。 半年後にその医師が都内に開業すると知り、一日千秋の思いで待ち続けました。今から10年以上も前の事です。そして開業と同時に予約を入れて、娘のミーを連れて診察に向かいました。 ところが、問診が始まるとその医師は具体的な知見を話すことなく、「統合失調症は親が悪い」との主張を繰り返すばかりなのです。その言葉はそれでなくても何かにつけ自責の念にかられている親にとっては残酷すぎます。 落ち込みながらも果たして「親が悪い」と断罪することが、治療に役立つだろうか、というのが初回の疑問でした。 その上、「人はその気になればどこでもお金がなくても生きていける、農業をやり、魚をとれば食べていける」などと言うのです。 病気の診療方針なのかもしれませんが、はたして統合失調症の患者に向かっていうべき言葉なのでしょうか。当事者や保護者へ寄り添うといった感情は微塵も感じられませんでした。 診療所の隣は薬害を取り除くための低温サウナや、汗を出す運動器具が置かれた部屋でした。遠方から低音サウナや運動に通うのは困難でしたが、藁にもすがる気持ちで何度か通いました。 しかしその後、薬を絶ったミーはとても不安定になりました。 そんなある日、医師との面談を終えて診察室から出て来た老夫婦が、待合室にいる私たちに向かって声を震わせこう叫んだのでした。 「みなさん、あの医者はひどい人です。本を読んでこの先生なら娘を助けてくれるかもしれないと、必死になってすがりましたが、親が悪いとしか言わない。あの男のいうことは信じてはダメですよ、あんな酷い奴は許せない」 この男性は激昂し、隣では夫人が首をうなだれていました。あの姿を忘れることはできません。 その病院に通うのをやめたのは、あるとき、落ち着きをなくしたミーが病院のエレベーターの前で寝そべって乗ろうとしなかったのを見て、この医師が「こんな変な人、見たことがない」と吐き捨てたのです。 患者を救うべき医者がそこまで突き放すかとゾッとしたことを覚えています。 心残りは待合室のボードに貼らされた、その病院に対する宣伝の一言。ミーも断薬を始めて間もなく、まだ受け答えがしっかりしていた頃に「薬を抜いて体調が良くなりました」と書き、自分の名前を添えて貼ったのでした。 まさかと思いますが10年以上たった今でもそのままだとしたら、すぐに飛んでいって剥がしたい思いです。