山田邦子、片岡鶴太郎、柳沢慎吾…80年代に輝いた「レジェンド」が今、お笑い番組で再評価される理由
潜在的な憧れも
80年代からテレビを見ている世代は、今では中高年になっている。彼らが当時のスターの現状を見れば、自分たちと近い世代のタレントが今でも生き生きと活躍している姿に勇気をもらえるに違いない。 次に考えられるのが、80年代の好景気の時代に対して、人々が潜在的に憧れを抱いているということだ。今の時代、国民は厳しい状況に置かれている。長期の経済停滞とデフレを経て、今では物価は上がり始め、社会保障の負担率も上がり、人々の生活は苦しくなるばかりで、明るいきざしが見えない。 そんな中で、多くの人が好景気の時代のキラキラした雰囲気を取り戻したいと感じているのではないか。80年代に活躍したスターには底抜けの明るさがあり、当時の空気を感じさせてくれる。そこに人々が希望を見出しているのだ。 当時を知る世代の人々だけではなく、今の若い世代にとっても、80年代レジェンドスターの存在は一種の刺激になっているのではないか。芸人顔負けの個人芸と圧倒的な明るさを持っている柳沢慎吾。ヨガにはまりすぎて独特すぎるライフスタイルを送る片岡鶴太郎。最高月収1億超えの化け物じみた数々の伝説を持つ山田邦子。 そんな彼らは、共演する年下の芸人やタレントから見ても興味深い存在である。それは視聴者にとっても同じだ。珍しい天然記念物の動物を見るような目で楽しめるところもあるのだろう。 芸能界は生き馬の目を抜くようでないと生きていけない 厳しい世界である。そこで長年生き残っているというだけでも、並大抵のことではない。80年代スターの再ブレークの要因は、彼らが経済的にも文化的にも豊かだったかつての日本を象徴する存在だからなのだ。 ラリー遠田 1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。 デイリー新潮編集部
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