「ONE PIECE 」「SLAM DUNK」の東映アニメーションが“大躍進”。「ガールズバンドクライ」DVD2万本を突破で新境地を開く
“従来とは異なる層”を取り込んだ意味は大きい
しかし、見事なヒットを飛ばしました。「ガールズバンドクライ」の主人公は、ロックの申し子ともいうべき人物。顔がむかつくという理由でバンドメンバーにウーロン茶をかけ、路上を歩く会社員に向かってシーリングライトを投げつけるなど、傍若無人なキャラクターとして描かれています。他のメンバーの個性も際立っており、それぞれが衝突する様はこれまでのヒット作とは一線を画すものでした。 ストーリーも典型的なサクセスストーリーとは一味違うもの。作品に奥行きを持たせています。制作陣の熱量が伝わる作品に仕上がっているのです。 事業の成長にとって、新たなIPを創出する活動は欠かせません。東映アニメーションが従来とは異なる層を取り込んだ意味は大きいでしょう。 足元で海外展開にも注力しています。2023年2月にスタートした「スパイシーキャンディ」は中国向けコンテンツ企画の子会社である東映動漫の初企画アニメ。短尺動画のSNSプラットフォームに配信しています。動画の再生回数は1億回を超えており、全プラットフォームのフォロワーは59万を突破しました。 サウジアラビアのマンガプロダクションと共同制作した「アサティール2 未来の昔ばなし」は、2024年11月に逆輸入されて日本でも放映されています。 「アサティール 未来の昔ばなし」は2020年1月にアラブ諸国で放送を開始。アメリカでも放送されるなど、人気を博していました。 フランス市場開拓を目的とした新作アニメ「Le Collège Noir」も製作。フランスのアニメーション配信に特化したADN (Animation Digital Network)との共同製作で、映像販売と商品化権も取得していました。 東映アニメーションは「ワンピース」や「ドラゴンボール」、「プリキュア」など既存作品への依存度が高い状態が長らく続いていました。その時期を乗り越え、IPを創出する新たな会社へと生まれ変わろうとしています。 <TEXT/不破聡> 【不破聡】 フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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