精神的に限界「関わり断ちたい」 子供が望んだ〝家族じまい〟の内実 「薄縁」時代㊤
LMNには今、年老いた団塊世代の親を抱えた30代後半~50代からの相談が絶えない。代表理事の遠藤英樹さん(57)は「3年前は月30件ほどだった問い合わせ件数は、今では5倍近い」と明かす。
多いのは、長期間交流がなかった親から、突然連絡を受けたというケースだ。さまざまな葛藤の末、実家から離れて暮らしてきたのに、再び親と向き合い介護や最期を看取る「問題」に直面。戸惑いや不安から、その代行を依頼する人も少なくない。定期的に連絡を取り合う関係であっても親が認知症となり、対応に疲れ切った子が家族代行を依頼してくるケースなどもあるという。
核家族化が進むが「親の面倒は子がみるもの」との価値観は根強く、遠藤さんは「子は年老いた親について一人で悩みがちだ」とする。そうした中で親を誰かに任せる選択肢があることで、「救われた」と話す依頼者も少なくないという。
店じまいならぬ〝家族じまい〟。薄情にも映りかねないが、遠藤さんはこう続けた。「支援を受けられない高齢者も大勢いる。子がお金を出して親を誰かに任せることは自分勝手ではなく、ある種の優しさといえるかもしれない」
■1人暮らし高齢者、2050年には1084万人に
内閣府の「高齢社会白書」(令和6年版)から65歳以上のいる世帯を構造別にみると、三世代で暮らす世帯は昭和55年には50・1%と全体の半数を占めていたが、令和4年には1割を切り7・1%まで減少している。
一方、夫婦のみの世帯と単独世帯は、昭和55年は、それぞれ16・2%と10・7%だったが、令和4年には、32・1%と31・8%となり、計6割超に上っている。
1人暮らしの65歳以上の高齢者は、昭和55年の約88万人から令和2年には、約672万人まで増加。2050(令和32)年には約1084万人に達する見込みだという。
65歳以上の高齢者を対象とした国の調査(令和5年度)によると、「孤立死を感じるか」の問いに「とても感じる」「まあ感じる」とした割合は計約5割に上っている。(三宅陽子)
急激な単身化が進む日本で、これまで人と人とをつないできた「縁」が薄まっている。そんな社会の今を追った。