鳥取市で「自動運転バス」実証実験 先進地の事例から見えた実用化への課題は「採算性」
自動運転バスについて、国は2027年までに全国100カ所以上での導入を目指している。 愛媛・松山市では、2024年12月25日から、全国で初めて、運転士を必要としない「レベル4」の路線バスの運行が始まったほか、実用化に向けた実証実験がいくつかの地域で行われている。 【画像】価格は通常のバスの4.5倍!採算性が課題の自動運転バス
各地で導入へ動き 実証実験の先進地・岐阜市では
そのひとつ、岐阜市では、約5年間の実証実験が2023年11月に始まった。2028年3月まで、毎日、自動運転バスが運行されている。午前10時から午後4時過ぎまで30分間隔で1日12便、運賃は無料だ。 オペレーターが乗り込み走行を補助するため、完全自動運転ではないが、中心市街地で毎日自動運転バスを運行するのは全国で初めての試みだ。
1年間で延べ4万8000人 想定上回る利用
岐阜市交通政策課の宇野真由美さんによると、実証実験開始から1年間の利用者は延べ約4万8000人、1便あたり平均10人が乗車し、当初の想定を3割ほど上回る利用状況で、担当者自身も驚いているという。 バスは、時速19kmで中心市街地をゆっくりと周回、観光客の利用もあるという。
課題は運行経費 市民の理解も重要
岐阜市でも、路上の障害物の回避や車線変更など技術面で改良の余地があり、この5年間の実証実験で精度を高め、オペレーターが乗らない完全自動運転の実現を目指している。運行にかかる経費は5年間で7億2000万円。その大部分を国の補助で賄っている。 岐阜市交通政策課・宇野真由美さんは「料金はどうするかなどまだ決まっていなくて、今後、継続運行を考えると、費用面が重要な課題」と指摘、「自動運転バスは公共交通にとって重要なインフラで、将来にわたって持続可能にし、市民のみなさんに受け入れてもらうという意味でも、毎日見てもらうことがかなり大事なことだと思う」と、長期間の実証実験の意義を説明した。
交通量少ない地域でも思わぬ壁
一方、鳥取市の隣の八頭町でも2019年、自動運転バスの実証実験が実施された。 JR郡家駅前から観光施設「大江ノ郷自然公園」までの片道7.2kmで運行されたが、時速19kmの低速で走行したため、後続車両の走行の妨げになったほか、センサーが踏切を認識できず、手動運転が必要などの課題が見つかり、導入に至っていない。 八頭町の吉田町長は「先駆的な取り組みができればいいが、ひとつずつ課題をクリアしていくことになると思う」と、自動運転の導入に向けたハードルの高さを強調した。
国の補助頼み 採算性のクリアが課題
自動運転バスの導入に向け、地域ごとに課題がある一方、共通の課題も見つかっている。 そのひとつが採算性だ。車両の価格は1台9000万円。 通常のバスの4.5倍で、国からの補助金があるものの、いきなり複数を導入するのは決して低いハードルではない。鳥取市交通政策課の宮谷卓志課長は「補助金で1台安く入れたとしても続かない。量産されていくと、補助金はないが価格が下がる。どちらのタイミングを選ぶかは政策判断になる」と話す。 路線バスの維持、そして、公共交通活性化の“救世主”になるのか。 多くのハードルが待ち構えながらも、自動運転バスへの期待は高まっている。 (TSKさんいん中央テレビ)
TSKさんいん中央テレビ