性分化疾患を抱える女子ボクサーは「女性」だ...パリ五輪の性別騒動
父親「娘への攻撃は道徳に反している」
性分化疾患を抱えるアスリートで有名なのは陸上女子800メートルでロンドン五輪、リオ五輪を連覇した南アフリカのキャスター・セメンヤ選手だ。男の子のように見えたことから子どもの頃からいじめられ、何度も性別を疑われた。IOCにとってこの問題は蒸し返しである。 ヘリフは子どものころ、村からジムまで約10キロメートルのバス代を稼ぐため、母親がクスクスを売る傍らで金属くずを集めていた。ヘリフの父アマルさんは「娘のイマネに浴びせられる攻撃は道徳に反している。祖国のために金メダルを獲得してほしい」と励ます。 アマルさんは英大衆紙デーリー・メールに「彼女に対する攻撃はフェアではない。6歳のころからスポーツが大好きでサッカーをしていた。このような批判やウワサは娘を不安定にさせるのが目的で、彼女が金メダリストになることを望んでいないのだ」と訴えている。 一方、棄権したカリニは「この論争は私を悲しくさせる。対戦相手に申し訳ない。(IOCが)彼女が戦えると言ったのなら私はその決定を尊重する。試合後、握手をしなかったことを後悔している。彼女とみんなに謝りたい」と母国のスポーツ紙に語っている。 ロシア主導のIBAはガバナンス、ロシア国営エネルギー会社ガスプロムへの資金依存に懸念を示してきたIOCと対立、19年に資格を停止されている。このため東京五輪、パリ五輪と2大会連続でIOCがボクシング競技を運営している。 IBAのウマール・クレムレフ会長は「なぜ女子ボクシングを潰すのか理解できない」とIOCを批判し、カリニに五輪優勝報奨金(全部で10万ドル)と同じ金額を授与すると表明した。 SNS上で無責任なウソやウワサ、デマが駆け巡り、無知が偏見と差別を広げていく。今回、騒動が蒸し返された背景にはLGBTQ+(性的マイノリティー)を異端視するウラジーミル・プーチン大統領の「伝統的な家族観」が影を落としている気がしてならない。