子どもの「お年玉」を内緒で生活費の足しにしていたら、子どもに「それって泥棒だよね」と言われました。お年玉でも犯罪になるのでしょうか…?
子どもに代わってお年玉を受け取った後、手渡さずに使い込んでしまい、子どもから「自分がもらったはずのお年玉を預かっているはず。どこに行ったのか」と聞かれ、ドキッとしたことのある人は少なくないかもしれません。使い込んでいたと子どもに明かして「泥棒じゃん!」「返してよ!」と言われると、本当に犯罪なのではと不安になる人もいるでしょう。 子どもがもらうべきお年玉を、親などの保護者が使う行為は法に抵触する可能性があるのでしょうか?
刑法上は横領罪に当たる可能性がある
民法第824条では「親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する」と定めています。つまり、親にはお年玉を管理する権限が認められていると考えられます。しかし、道徳的に考えて親が子どものお年玉を勝手に使っていいわけではないでしょう。 お年玉の所有権を持つのは子どもです。刑法第255条では「自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する」と定めています。これはいわゆる「横領罪」を定義する法律で、子どものお年玉を勝手に使う行為は横領罪に当たる可能性があります。親が子どものお年玉を「横領」した場合、実際に刑罰を受けることはあるのでしょうか。 ■親族相盗例により家族間の窃盗や横領は罪に問われない可能性 刑法244条には「配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する」と定められています。「親族相盗例」と呼ばれ、横領罪にも適用される特例です。 したがって、親が子どものお年玉を使っても刑罰を科されることはありません。
賠償責任を負うかは使い方による
親が勝手に子どものお年玉を使ったとしても、刑罰を受けることはないと考えられます。ただし、親が勝手にお年玉を使う行為が許されるわけではありません。不法行為となり、使い込んだ分を返済する義務が生じる可能性はあるでしょう。 ■親自身のために使った場合は不法行為になる可能性がある お年玉の所有権を持つのはあくまでも子どもなので、子どものために使うことが大原則です。例えば以下のような使い方は子どものための出費とはいいがたく、返済義務が生じる可能性が高いと考えられます。 ●ブランド品など親が欲しいものを買うために使う ●親だけの食事や旅行に使う ●お酒やタバコなどの嗜好(しこう)品に使う ●パチンコや競馬などギャンブルに使う 子どもから訴訟を起こされ賠償を命じられるケースは、現実的ではないかもしれません。しかし、このような目的に子どものお年玉を使うことが不法行為に当たるという認識を持つことは大切です。 ■「子どものため」の全てが許されるわけでもない お年玉の使い道が子どもの利益につながるのであれば、不法行為に当たらないと考えられます。例えば、以下の使い方が考えられます。 ●子どものためにおもちゃを買う ●子どもの習い事の費用や学費に充てる ●子どもの学用品を買う ●子どもの生活費に充てる ただし、これら全てが無条件に許されるわけでもないでしょう。本来、子どもの生活費や学費は親が支出するものです。家庭の経済状況に余裕があるのに、あえて子どものお年玉の使い道を親の考えだけで決めるのは、子どもに対する配慮が欠けると考えることもできます。