Skateboarding Unveiled vol.7 ~スケートボード写真の「ちょっと違うんだよなー」感~
スケートボードを長年撮影していると、こんな質問をされることがある。 「この技ってボードが裏返ってる瞬間を使うんじゃないんですか⁉︎」 「踏み切りも着地も、どんな技なのかも全部わかるのにどこがダメなんですか?」 それらの写真について、選手や専門家と話すと、こんな会話になる。 「なんか技に失敗してるみたい」 「あのセクション(障害物)の意味ないじゃん」 まず、ここまでの流れでピンと来た方はかなりのスケートボードマニア。 そう、これは昨年Yahoo!ニュースエキスパートに公開し、驚異的な閲覧数とともに月間MVA(Most Valuable Article)も獲得した『スケートボード写真の「それじゃない」感 選手や業界関係者と、スポーツ報道のズレ』と同じ構成だ。 当時と比べれば、今は伝える側(卓越した人が伝える専門メディアではなくマスメディア)の知識や経験も増えたので、選手や専門家の意図を汲んだ写真にしようという意図が伝わるカットも増えたが、それ以上にスケートボード写真の世界は奥深く、上記の記事内容も氷山の一角に過ぎないので、今回はさらに掘り下げた内容をお届けしていきたい。 まずは前回のキーポイントとなった「暗黙のルール」からおらさい。それは以下の2点になる。 ・トリックのピーク (1カットで何のトリックを行なっているのかわかる一瞬) を押さえる ・アプローチと着地点 (どこで踏み切ってどこに着地しているのか) を収める 前回はこれらについて自分の写真を用いて解説したのだが、今回はそこを理解した先に陥りやすい誤認識や疑問について説明していく。
「どんな技かわかりやすい」がピークではない
まずスケートボードの撮影をする時、最も重要となるのが、何のトリックをしているのかがわかることだ。もちろんそれは間違いではない。 ただそればかりに囚われると、今度はスケートボードで最も重要な個性やスタイルが表現できなくなる。 次の2枚の写真を見比べてほしい。 これはキックフリップというつま先を背中側前方に擦り抜いて、ボードに縦回転を加えるトリックにになるのだが、それであればこの裏返っている瞬間が、どんな技であるのかが最もわかりやすいし、馴染みのない人でもすぐに理解できるだろう。 ではこの写真はどうだろうか。