小泉今日子、10代に戻れるなら「もうちょっと一生懸命勉強したい」 揺れ動く芸能界の変化を語る「この痛みは希望」
■ドラマ『不適切にもほどがある!』に“感謝” 足りない経験を埋めてくれたのは“本”だった**
宮藤氏が手がけるTBS系金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』では、自身のポスターが採用されている。「『ポスターを使いたい』というご連絡を、だいぶ前にいただきました。内容をそこまでは確認せずに、信頼している宮藤さんと磯山さんだったら…どうぞどうぞみたいに言っていたら、あんなふうに未来と過去をつなぐ重要な役割で使ってくださっていて(笑)。私はただ、なんか80年代の誰かの部屋に好きに貼ってあるポスターぐらいの感じで捉えていたら、ドラマ始まってみたら、すごく重要なところで使ってくれてるって、うれしかったです。もちろん、楽しく見ております!」。 信頼できる宮藤氏との対談では、小泉が自身のキャリアで、いわゆる「下積み」というようなものがなかったことから“逆行”するように、キャリアを重ねてからさまざまなことに挑戦していると打ち明けていた。その真意を改めて探ってみた。「そうですね…。どこにいっても、なんかお客さんみたいな感覚で捉えられて『でも、アイドルだもんね』っていう感じがあったんです。ミュージシャンの中に入っても、ミュージシャンじゃないし、劇団系の舞台の役者さんたちとお仕事しても、その経験してないし…みたいな感じで。自分はなじんでるつもりなんだけど、やっぱ何かが違うんだろうなぁみたいな感じがあったんです」。ふっと笑顔をこちらに向けて、言葉を紡いでいった。 「アルバイトの経験もなく、社会に出て、いきなり歌を歌うことからだったので、なんかちょっとずつ、そこを埋めようという感覚がありました。舞台の俳優さんたちと仕事している時に『じゃあ飲み行くぞー』ってなって、チェーン系の居酒屋さんに行こうとしても『でも、キョンキョンいるから、まずいんじゃない?』みたいな雰囲気になったのですが、私は『いや全然行きますから!白木屋いいですよね!グレープフルーツサワーおいしいですよね』みたいな感じで(笑)、なんかそんな時代を経ての今があります」 政治家の小川淳也氏から「小泉さんはなぜその世界にいて… 正気を保っていられるんですか?」と向けられたことがあるという小泉だが、自分に足りないものを埋めてくれる存在のひとつが「本」だった。「自分が足りてない経験などを教えてもらいました。小さい頃には『こんな想像していて、自分がちょっとおかしいのかな』と感じることがあったのですが、本に同じようなことが書かれていると『あっほかにもいるんだ!』って、うれしくなって。そうしたら、もうその本は友達になりますもんね。私にとって大島弓子さんの漫画もそうでしたし、星新一さんの小説にもそういうことを感じて。空想や想像することって、学校とかに行っている時間には、あんまり必要ないことだと思いがちだけど、空想してもいいんだって思えたこと、それを子供の頃に本によって思えたのは幸せなことです」。 ■女性が「突きつけられる」もの 「今思えば…」はあとから言ってもいい「その時は言えなかったりする」 花田氏との対談の中では、女性がある年齢になると「結婚」「出産」などといったものを迫られるとのトークも行っていた。小泉は、そのパートを振り返りながら「女性って、すごくいろんなことを迫られるんですよね」と切り出した。 「思春期とかに、例えば初潮が来るとか、明らかに違うことが起こるみたいな。それをすごく恥ずかしく思ったりとか、なんか嫌な気分になる子も、絶対いたりすると思うんです。そこから、ある年齢になると『結婚して、子供そろそろ産まないと産めなくなるよ』みたいなことも言われて。そうして、最後に閉経というのが来て…というように、すごく体に変化が起こるんです、女性という生き物は。その度に、すごく何かを突きつけられる、焦らされるみたいな時間を多分全員が感じると思うんですよね。男性にもあるのかもしれないけど『そりゃ、男の人よりちょっと早く大人になるわな』って思ったり…します(笑)」 そんな花田氏との対談では「自分がもし10代に戻ったらみたいなということを考えることもあるんです」と語っていた小泉に、今10代に戻るとしたら何をするか尋ねてみた。「大人になった時に、もっと早く戦えるよう、もうちょっと一生懸命勉強したいです。もっと早くに、もっと勉強していたら、もっと早くにかなえられることがあったかもって思ったりします。例えば、ダンスとか語学とか、ちゃんとお勉強が楽しいって思える子になりたいです(笑)」。勉強を楽しいと思えなかった理由について、慎重ながらもたしかな口調で自身の過去を振り返った。 「当時、英会話の教室に一度行ったことがあったのですが、今思えばセクハラみたいなのに遭って、もう行きたくないってなったんです。当時は『セクハラ』という言葉も今ほど広まっていなかったので、会社の人とかに理由をうまく言えなくて。『授業料高かったんだぞ』って言われて『すいません』だけで、説明できずに終わってしまいました。その経験を経て感じることは『今思えば、あれってそうだったよな』って思うことはいっぱいあって。その時は『怖い』とか『気持ち悪いから、もう行きたくない』しか言えなかったり、そういうふうに終わっちゃってることがけっこうあると思うので、そういう経験を後になってから言い出せる人もいっぱいいるんじゃないかな」。冒頭に小泉が発した「言葉を知ることで、自分のことを考える時間が増える」という言葉が、より重く返ってきた感覚になった。