成長事業の新たな収益源に、東海カーボン「多結晶SiCウエハー」で攻める
東海カーボンが半導体関連分野を強化している。多結晶炭化ケイ素(SiC)ウエハーを開発。戦略提携した仏ソイテックに供給し、同社で単結晶SiCウエハーと貼り合わせて「貼り合わせSiCウエハー」にする。コスト競争力などが特徴だ。パワー半導体の需要増を見据えた生産体制の強化にも乗り出す。成長分野に位置付けるファインカーボン事業の新たな収益源として期待する。(山岸渉) 【写真】東海カーボンの「多結晶SiCウエハー」 「貼り合わせSiCウエハーは、パワー半導体に使われる単結晶SiCウエハーの置き換えになる」。東海カーボンでファインカーボン事業部長を務める進英雄執行役員はこう意気込む。同社の多結晶SiCは従来、半導体製造装置用の部材に使われてきた。今回の多結晶SiCウエハーで、半導体の原材料分野にも参入する。 貼り合わせSiCウエハーは単結晶部分に回路を作り、多結晶部分で形状を保つ骨格と電気を通す役割を果たす構造だ。 特徴は単結晶SiCウエハー1枚から10枚前後の貼り合わせSiCウエハーを作れ、コスト競争力に優れること。また多結晶SiCは電気抵抗が単結晶SiCに比べて4分の1―5分の1になる。電力損失を抑えられるため効率が向上し、省エネルギー化や小型化に貢献する。 足元では主流である直径6インチや、今後の拡大を見込む同8インチをサンプル提供中。単結晶の技術開発が進めば、同12インチの対応も可能だという。 東海カーボンは自社で最適に開発された黒鉛材を活用しつつ、高純度ガスから作る化学的気相法(CVD)という成膜技術を生かして半導体製造装置部材などを生産している。黒鉛材からCVDまで保有する総合的な技術力という強みを生かし、ソイテックの品質要求に見合う製品を協力しながら作り上げていく構えだ。 今後、期待するのは電気自動車(EV)需要の動向だ。EV需要は中長期的に伸び、搭載されるパワー半導体も増えるとみられる。SiCは高速充電に対応できる点などが強みとなる。富士経済(東京都中央区)の調査でも、SiCパワー半導体の市場規模は2035年に23年比約8倍の3兆1510億円に拡大すると予測されている。 東海カーボンは多結晶SiCウエハーの需要増を見据え、生産体制を強化する方針だ。約54億円を投じて神奈川県茅ケ崎市に建屋や設備などを導入し、多結晶SiCウエハーの新ラインを設ける。24年末に完成する予定だ。 進執行役員は25年以降の中長期的な市場動向を見ながら「グローバルで第2、第3段階の投資も考えていきたい」としている。