「朝起きられない」は当然だった…朝型社会は高校生・大学生・社会人の若者への負担大。「10時始業」導入による驚きの結果【医学博士が監修】
リズム障害は若者に多い
若者が朝起きられないのは生物学的な特性 朝型、夜型という言葉を聞いたことのある人は多いと思います。人間は、幼児期は朝型ですが、思春期~20代の若者の体内時計は平均して約2時間遅れ、夜型になります。この傾向は、社会的・心理的なものというよりも、生物学的な要因によるものです。30代を過ぎると徐々に回復し、40~50代を迎える頃には、再び朝型の生活リズムに戻ります。 夜型になると、学校などで早起きが必要な日でも夜遅くまで眠くなりません。遅寝早起きになってしまい、その結果、睡眠不足になる傾向にあります。これが高じると「概日リズム睡眠障害」となり、中には不登校になってしまう生徒も出てきます。 高校生は夜型になる 朝型・夜型は、実は体内時計によって決まる遺伝的な体質です。年齢によっても変化し、思春期以降では、生活リズムが夜型に傾いていきます。不登校のきっかけの1つは、朝起きられないリズム障害によるものと考えられます。 起立性調節障害と概日リズム睡眠障害 朝起きられない症状は、「起立性調節障害」にもあります。自律神経の不調が原因で血圧のコントロールが正常に働かず、目覚めても起き上がれないという病気です。一方、概日リズム睡眠障害は、体内時計の乱れが原因でうまく寝つけず起きられない状態になります。2016年の藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)の報告では、起立性調節障害の人に概日リズム睡眠障害の診断に使うテストを行ったところ、7割の患者が概日リズム睡眠障害でした。多くは概日リズム睡眠障害の影響で朝の自律神経が整わず、結果として起立性調節障害を引き起こしている可能性があります。どちらにしても生活に支障があれば、早めに専門の医療機関を受診しましょう。 朝型社会は高校生・大学生・若者に負担が大きい 多くの学校の登校時刻は早朝ですが、生活リズムがずれた学生にとっては、この時間はまだ睡眠を必要としている状態。次のような方法で身体を目覚めさせるなど、対策を立てて乗り切りましょう。 始業時間や睡眠に関する制度を導入した学校や企業の例 イギリス:登校時刻を朝10時にしたところ、授業中の居眠りが減り、成績上級者が増えた。 アメリカ2019年にカリフォルニア州で、中学・高校の開始時間を遅らせる「Start School Later」運動が行われ、生徒の成績向上や心身状態の改善などに成功。 日本:ベンチャー企業のCRAZYでは、1週間のうち6時間以上の睡眠を5日間以上とると報酬がもらえる制度を導入。 日本:アメリカのGoogleやナイキといった世界的企業の導入事例を受けて、三菱地所やnishikawaなど、フレックスタイム制やインターバル制度に加えて、パワーナップ(昼寝)制度を導入する会社が増えてきた。