政府発表の「骨太の方針2024」ポイント解説、経済成長や賃上げ論に既視感だらけの理由
裏金問題などから党内対立を回避
今回の方針における財政面での最大の注目点であった「基礎的財政収支」については玉虫色の結論となった。 自民党内では今回の方針策定にあたって、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の2025年度黒字転換を目標として盛り込むのかで激論となっていた。政府は以前から、基礎的財政収支を2025年度に黒字化する目標を掲げていたが、コロナ危機などもあり、その達成は困難という状況になりつつある。 党内で積極財政を推進するグループは、プライマリーバランスの黒字化そのものに反対してきたが、一方で、財政健全化を目指すグループは、2025年度における黒字化目標を堅持すると同時に、その後についても、明確な財政収支目標を示すよう求めていた。 今回の方針策定にあたっては難航が予想されたが、意外なほど簡単に決着する運びとなった。 当初、「プライマリーバランスの黒字化」そのものに断固反対すると主張していた積極財政推進グループが、「プライマリーバランスに“固執”することに断固反対」と文言を修正したことで妥協が図られたからである。「固執すること」に対して断固反対なので、プライマリーバランスの目標設定そのものは否定しないという意味になり、実際、方針には2025年度黒字化という文言が記載された。 積極財政派が大幅に譲歩した背景には、旧安倍派の勢いが低下していることに加え、裏金問題で党内対立が激しくなっており、政策分野での対立をこれ以上、深刻化させない方が良いという政治的判断があったようだ。 現実問題として2025年度の黒字化は困難であり、市場はむしろ、その後の展開に注目している。方針では、来年度から2030年度までの6年間に新たな計画を定め、基礎的財政収支の黒字化について成果を後戻りさせないとしている。だが期間中に黒字を維持するとは明記されていないので、この問題は来年の方針策定まで持ち越されたと考えて良いだろう。
執筆:経済評論家 加谷 珪一