政府発表の「骨太の方針2024」ポイント解説、経済成長や賃上げ論に既視感だらけの理由
いよいよ日本でもジョブ型雇用が本格化
企業に対して生産性の向上を求める一方、労働者側にも相応の変化を求めている。成長分野への人材移転を促すため、ジョブ型雇用の推奨やリスキリング(学び直し)の支援が盛り込まれており、労働者のスキルアップを図る方向性も示された。 これだけ変化が激しく、かつ寿命が延びている現代社会において、学生時代に身に着けたスキルのみで長いキャリアを通すのは極めて難しい。その意味では、リスキリングの機会を創設することそのものは高く評価できる。 一方で、同方針では成長分野への労働移動の円滑化も強く打ち出しており、政策的な取り扱いには注意が必要だ。 企業のビジネスモデルが変化し、経済活動が活発になれば、自然と人材の流動性は増すことになる。だがその逆はあまりないと思った方が良い。一部の論者は強制的に雇用の流動化を進めれば(つまり労働者の首を切れば)、経済が活性化すると主張しているが、それは誤りである。 企業が成長に寄与する分野への先行投資を強化すれば、必然的に多くの人材が必要となり、高い賃金を提示することで人が集まり、結果として雇用は流動化する。 方針では、ジョブ型人事(職務給)の導入について、すでに導入している企業の事例を掲載した「ジョブ型人事指針」を公表し、各企業の実情に応じて導入を検討できるよう支援するとしている。ジョブ型雇用へのシフトは、日本企業にとって必須の改革であり、それ自体に問題はない。だが、あくまでキャリアの再構築が目的であり、強制的に雇用の流動性を高めるために用いるべきではない。 日本の場合、どういうわけか、省力化=余剰人材=解雇、と発想する人があまりにも多い。省力化で余剰となった人材は企業内で成長分野に配置転換したり、既存の営業力強化に充当すべきであり、これが実現すれば同じ人材でより多くの売上高を獲得できるので、賃上げに対する効果が大きい。リスキリングはそのために必要な措置であるとの認識が大事だ。