担当スカウトが語る広島・鈴木誠也の獲得秘話
広島の鈴木誠也外野手(21)が神がかり的な活躍でブレイクしている。17、18日の交流戦のオリックス戦で2試合連続のサヨナラアーチ。19日の同カードでは決勝アーチを放ち、連日お立ち台に指名されて「最高です」と雄たけびを挙げた。交流戦の個人成績は、ロッテのデスパイネと並び、打率.381が3位、4本塁打、13打点である。チームも6連勝。セ・リーグで唯一、貯金を作って首位に立つカープ旋風を巻き起こしている原動力の一人である。 2012年のドラフトで二松学舎大付から2位指名された入団4年目。 鈴木の担当は尾形佳紀スカウトだった。 「嬉しいですね。2連続サヨナラホームランは凄すぎますが、でも驚きはないですよ。これくらいやれる素材でした。本人の努力が、そこにプラスされたのでしょう。根っからの野球小僧でね。一緒に新幹線で移動していたときも、ずっとユーチューブで野球の映像を見ているような男です。まだまだ、ここからですよ」 今春キャンプで鈴木がハムストリングスを痛めたときは、落ち込んだ様子で電話があったという。 「しょうがない。焦らず治すことに集中しろ。おまえの力があればレギュラーになれるんだから」 尾形スカウトは、そう励ましている。 尾形スカウトは、二松学舎付の1年秋から鈴木をマークしていた。 「球速は、140キロ後半くらい出て凄いボールを投げていた。1年の秋からは、最初、ピッチャーとして追いかけていたんです」 だが、次第に、その走力、通算43本を放ったパンチ力に目を奪われるようになる。 「50メートルが5秒台。走力もある。体に力があるのでバッティングではボールを飛ばす。一塁もやっていましたが、野手としても面白いなとは考え始めました」 いわゆる大谷・藤浪世代だ。 川端順編成部長も2012年のドラフトをこう振り返る。 「あの年は、1、2位は投手、あとは将来性のある野手をドラフト戦略として考えていたが、森、増田をクジで外したので将来性のある野手を上位指名した。外れ外れで高橋、肩も走力も兼ね備えていた鈴木を野手として2位で指名した。他球団の動きも耳に入っていたので2位でいかないと取れないと考えていました」 広島はあえて大谷、藤浪をクジで外すリスクを避けて、1位では単独指名濃厚と見られていた東福岡の左腕、森雄大を入札した。だが楽天と競合してクジに敗れ、続いて外れ1位でNTT西日本の増田達至を指名したが、これも西武と競合して外してしまう。 結局、甲子園出場経験のある龍谷大平安の高橋大樹外野手(22)を外れ外れ1位で指名して、鈴木は2位で指名した。巨人が執拗に追い続けていたため、3位まで遅らせると巨人に獲られるのでは?という懸念があったという。 鈴木は、甲子園出場経験はない。最後の夏は準々決勝で成立学園に敗れた。ネット裏に巨人、楽天、西武らのスカウトが揃っていたが、担当の尾形スカウトは、「もし甲子園に出ていたら、活躍したでしょうし2位では獲れなかったかもしれません」と振り返る。 もしクジで森か増田を指名できていれば、鈴木を指名できたかどうかもわからない。 これも運命のイタズラかのかもしれない。