福岡県嘉麻市に残る"幻の石橋"を未来につなごう 市教委がCFを企画
福岡県嘉麻市に残る"幻の石橋"を保存するプロジェクトが進行中です。珍しい構造の橋ですが、川岸の岩盤がもろくなるなど落下の危機にあります。保全工事費の一部に充てようと、市教育委員会はクラウドファンディング(CF)で12月27日まで寄付を募っています。 【画像】落下の危機にある「桑野の梯橋」
高校史学部の調査で注目
幕末期の19世紀後半に造られたと推測される「桑野の梯橋(かけはしばし)」で、遠賀川上流に位置する嘉麻市桑野地区にひっそりと架かっています。国内に残るアーチ形の石橋は、渡る方向に対して横に石材を組む「ブロックアーチ型」が多いのですが、桑野の梯橋は柱状の石材を渡る方向に縦組みする「リブアーチ型」なのが特徴です。
地図にも載っていないような存在でしたが、県立朝倉高校(朝倉市)の部活動・史学部の調査活動をきっかけに注目を集めました。
歴史的価値がある石造物
市教委によると、史学部が朝倉市内にある眼鏡橋を調べる中で、嘉麻市桑野に架かる梯橋の存在を知ったそうです。2019年に調査研究を始め、明治初期に編集された「福岡県地理全誌」に「梯」として記録されていることを突き止めました。 遠賀川上流域には、地元の花こう岩を使った同じ構造の橋が複数架かっていたこともわかり、現在も小規模な橋にリブアーチ型がわずかに残っていることが確認されました。桑野に隣接する地区には、総石造りの火の見櫓(やぐら)「小野谷の石造警鐘台」があり、やはり優れた技術をもつ石工による建造物と考えられるそうです。 桑野の梯橋は高校生の活動をきっかけに歴史的価値が見直され、23年5月に嘉麻市の指定有形文化財となりました。
人口減で財源確保に苦慮
橋は全長7.34メートル、幅1.82メートル。見学者の安全確保が困難なことから、現在は立ち入りが禁止されています。本体に大きな損傷はないものの、集中豪雨による洪水の影響などで橋を支える川岸の岩盤が削られ、橋が落下する恐れがあります。
人口約3万4000人の嘉麻市。少子高齢化の進行で市の自主財源は乏しく、文化遺産の保存に必要な財源確保に苦慮しているそうです。そこで市教委は、橋を未来に残したいと願う地域住民らの熱意に応えようと、CFに取り組むことにしました。
CFの目標金額は800万円、期限は12月27日23時です。石橋の保全には、川岸の岩盤を補強する必要があり、寄付金は工事用道路や仮設足場の費用に充てます。 市教委の担当者は「全国のみなさんの協力が大きな力になります。幻の石橋を地域の宝として残し、教育や観光に広く活用していくために温かい支援をお願いします」と呼びかけています。
読売新聞