動き始めたエネルギー基本計画 ”従来型”発想から脱却の時
今期のエネ基改定では「電力需要の変動にどう対応するか」が注目されている。その意義を捉え直し、「脱炭素」を国益につなげることこそが重要となる。「Wedge」2024年9月号に掲載されている特集「エネルギー確保は総力戦 日本の現実解を示そう」記事の内容を一部、限定公開いたします。 5月から、経済産業省の総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会において、「第7次エネルギー基本計画」(以下、エネ基)策定に向けた検討が始まった。7月末時点で既に5回が開催され、隔週ペースという急ピッチで議論が進められている。 2021年に作られた前回の「第6次エネ基」は、50年カーボンニュートラルに向けた30年温室効果ガス46%減という、いわゆる「脱炭素」の目標に沿った初めてのエネ基で、太陽光・風力といった再生可能エネルギーの倍増や、家庭部門非電力エネルギー消費量の57%減など、「野心的」なエネルギーミックスや電源構成比(長期エネルギー需給見通し)が示された。 この第6次エネ基は「実現可能性に乏しい」として、今回の見直しではより現実的な目標を持った計画に修正すべきとの批判が根強いが、そのような指摘は以下に述べる3つの理由から的外れであると考える。 第1に、第6次エネ基で示された30年のエネルギーミックスは、そもそも「目標」ですらないということだ。こう言うと、「エネ基は、国のエネルギー政策の指針や方向性を示すものと報道されているではないか?」「目標でなければ、エネ基とは一体何のためにあるのか?」と思う読者があるかもしれない。 だが、エネ基の本文でも巧みに「目標」という表現は回避されており、こう書かれている。 「46%削減に向け徹底した省エネルギーや非化石エネルギーの拡大を進める上での需給両面における様々な課題の克服を野心的に想定した場合に、どのようなエネルギー需給の見通しとなるかを示すもの」 非常に回りくどい、いかにも官僚的な表現である。筆者なりに意訳すれば、「46%削減という値に対して実現可能性が高いとはいえない(=野心的)、かろうじて整合性のとれる内数を作ったが、せいぜいのところ努力目標としての参考値」といったところだろうか。つまり、エネルギー供給に関する政府目標というものはもはや存在せず、あるのは「野心的な想定」だけということだ。