イッセー尾形、台本あってもアドリブに「その場のノリで言葉があふれてくる」
俳優・イッセー尾形が連続ドラマに出演している。今回の役どころは、酒にうんちくのある薬屋さんだ。14日から始まった『居酒屋ぼったくり』(BS12 トゥエルビ)は、東京・下町の小さな商店街にある姉妹が営む居酒屋に、おいしいお酒と料理を求めてやってくる常連客とのあいだで繰り広げられる心温まる物語で、片山萌美が人情に厚い居酒屋の女店主・美音を演じる。イッセー扮するシンゾウは、常連客の一人。「これは吟醸だな」「これは山廃か」と、酒の講釈を述べる姿はどこからどう見ても酒通そのもの。常に人間を演じることにこだわり続けてきたイッセーの、役作りとは? 片山萌美、ふつうにいい人役はほぼ初めて 「目標は女優の太地喜和子さん」
アドリブ盛りだくさん シンゾウのイメージは“余計な一言”
「アドリブはいっぱい言っています。どれが台本でどれがアドリブか区別がつかない。その場のノリで、言葉があふれてくるんです。相手の顔色を見ながら、いま突っ込んでやろうとか、いろいろなことを思いながらやらせていただきました。“余計な一言”が、シンゾウのイメージですね。それが許される。楽しかったです」 十八番の一人芝居でも、酒場の人を演じたことはある。 「常連客は何回かやったことはあります。バーテンの役も。でも、その経験は一切役に立たないですね。酒がらみで、うらみつらみを言ったり、という役が多かったですから。(『居酒屋ぼったくり』の場合は)あんないい酒はないですから。悪い人が一人も出てこない。衣装さんや演出家、皆さんに助けられて、シンゾウのイメージができました」
すんなり、シンゾウという役に入っていくことはできたのだろうか。 「シンゾウから発していくというより、片山さんと高月彩良さんが演じる姉妹が初々しく店をやっていこうとするなかで、なんとか育ててあげたいなと思いつつ、からかいたくなったり、そんな交流が初日からずいぶんキャッチできました」 実際に酒場にいるのと同様の交流が芝居の場にも存在し、それぞれの役が自然に成立しているようだ。キャストはベテランから若い世代までさまざまだが、現場の雰囲気はどうだったのか。 「ベテラン勢の方々はみんな初対面だったんですけど、居心地がよくてね。余計なことを言っても許される、あるいは水を差されるのもよし、お風呂に浸かっているみたいに幸せでした」 若い人に対して、“余計なひと言”が言い足りない場面もあったという。常連の若い女性客、福田彩乃が登場する回の撮影でのことだ。 「福田彩乃さん、もうちょこっとだったんですよ。からみがね。だからもし次回というものがあるのなら、もっと僕たち世代と激論をかわすとか、昔はこうだったていう自慢話とか、武勇伝を語るとか、そういうのをやりたいなと思いましたね。足りなかった。一話だけでしたから。なんか、こう悩んでいるふうであってね、とことんアドバイスをするんだけれど、説教もしたかった(笑)」