jo0jiワンマンツアー完遂、クリエイティブの深度を示した「歌」の空間
11月1日東京・渋谷WWW X、9日大阪・Yogibo META VALLEYにて、jo0jiが自身初のワンマンツアー『jo0ji 1st ONEMAN LIVE 漁火』を開催した。本稿では、東京公演をレポートする。なお、jo0ji×imase×なとりの3マンライブ『Juice』が、2月11日大阪・Zepp Namba、2月16日東京・Zepp Hanedaにて開催決定。現在、オフィシャル二次先行受付中(11月10日23:59まで)。 【ライブ写真】『jo0ji 1st ONEMAN LIVE 漁火』(計15点) 歌とは何か。歌は何のためにあるのか。大げさに聞こえるかもしれないが、そんなことを教えてくれる「歌」がずっと降り注がれるライブだった。 現在も鳥取の漁港で働きながら音楽活動を加速させている、シンガーソングライター・jo0ji。私は初めてこの歌を耳にしたときから、今の世の中のどこにも鳴ってない歌だ、と思った。吉田拓郎、中島みゆき、忌野清志郎などをルーツにするjo0jiの歌は、日本のフォークやブルース、ロックンロールを感じさせるものであり、それでいて、時代の耳と心にじんわりと染み込むものである。 『jo0ji 1st ONEMAN LIVE 漁火』にはKing Gnu、MILLENNIUM PARADE、Tempalayなどのアートワークやライブ演出などでもお馴染みのクリエイティブユニット・Margtが参加。楽曲を深く汲み取ったうえで制作された、海・光・街などを表した映像や、生カメにリアルタイムでエフェクトをかけてjo0jiを映し出す手法など、演出も素晴らしかった。開場中から、ステージ前のフロアだけでなく、バーカウンターのあるロビーやお手洗いの中まで海の音が流れていたり、エントランスにはjo0jiオリジナルの大漁旗や実家から持ってきた漁網が飾られていたりと、jo0jiのルーツとこの日のテーマである『漁火』を表現するために、細部まで作り込まれていたことが印象的だった。会場に足を踏み入れた瞬間から最後の拍手が鳴り止むまで、jo0jiやMargtの「ライブ」にかけるクリエイティブの深度が見えた。 『漁火』のテーマについては、ライブの中でjo0jiがこう語った。 「海の近くに住んでいて、家から夜になると漁火が見えるんですけど。音楽をやり始めてから憧れの人と会う機会が増えて、俺が岸から見ていた“光”みたいな人たちと一緒にやるようにもなった。俺も光る側に立ったのかもしれない、漁火になれるよう頑張る、みたいな意気込みでこのタイトルをつけました」 オープニングは、昭和のラジオ音声で「(前略)水平線の向こう、白んだ空の先、漁火に照らされるあんたの影を見た。“こんな具合になったのはきっとあんたのパンクをみたから ロック・アンド・ロールするには大口叩いてみることだな”。俺は今、誰よりも遠くへ行ける気がしている」と、jo0jiの紹介が流れる(これはjo0jiが活動初期から使っているプロフィールテキストであり、当時から「漁火」という言葉が使われていたことに改めて気づく)。 漁火が海の水面に伸びている映像を映し出し、最新曲「ワークソング」からスタート。右手でスタンドマイクを握り、左手はズボンのポケットに突っ込み、目をつむりながら首を少し左側に傾けて、一つずつ言葉を発するjo0ji。1番はギター、ピアノ、キックの音だけに乗って歌を紡ぐ。その姿に、その歌に、吸い込まれていく。そして2番に入るとバンドサウンドが勢いよく鳴り響き、フロアにいる人たちの緊張を一気にほぐしして巻き込んでいく。2番の終わりでラッパが鳴り、3拍子のリズムへと突入。このあと続く楽曲でもjo0jiは多彩なサウンドで魅せてくれたが、1曲目からそれが凝縮されていた。 「ワークソング」は最新曲にして、jo0jiが表現するテーマが全部詰まったような曲でもある。先日公開したインタビュー(これまでjo0jiを知らなかった人からも「発言に感動した」とコメントをたくさんいただくほどの反響で、未読の方には是非とも読んでいただきたい)では、「死」と共存しながら生きること、人間には優しさがあるはずだと信じる姿勢、まるで決められているかのような世の中の流れに逆らってみる勇気、自分の心の灯りや夢を誰かから吹き飛ばされないように守ること、とにかく「大丈夫」「生きてゆけ」と音楽を通して伝えようとする想いなどを語ってくれたが、「不屈に花」から今に至るまでに通底している彼の信念がすべて凝縮して表現されているような一曲だ。そんなjo0jiの象徴であるような曲から、初のワンマンは幕を開けた。