2016年にエヌビディア株を買っていれば…多くの投資家が「爆アゲ個別株」を見落とすワケ
米半導体大手のエヌビディアは近年急成長を遂げ、株価も急伸。今では気軽に購入するのが難しいトップ企業のひとつとなっている。しかし、数年前には株価下落のタイミングがあり、同社の株を手放した投資家もいれば、買いのチャンスを見逃してしまった投資家もおり、悔しさを感じている人もいるだろう。彼らはなぜ“チャンス”を見逃してしまったのか。京都大学で長年証券投資を分析・研究している川北英隆氏が、急成長企業の事例をもとに解説する。※本稿は、川北英隆氏『京都大学人気講義の教授が教える 個別株の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● アメリカ株には庶民が買える 魅力的な銘柄が多数 株式で資産を運用していると、理論のとおりに進まないことがある。たとえば日本には単元株制度という個人に理解不能な制度があり、はした金では有名企業の株主になれないことが多い。ましてや政府や業界が推奨する金融リテラシーに基づき分散投資するのは夢物語に近い。 貧乏人とは言わないまでも、「庶民は投資信託を買え」ということだろうか。 それはともあれ、アメリカは開放的であり、日本国民にも市場での取引を開いてくれている。アメリカ株なら1株から買える。ネット証券を使えば売買手数料も高くない。だから、ほとんどのアメリカ企業ではたかだか10万円もあれば株主になれる。このため庶民でも分散投資ができる。 加えて、アメリカには夢のような企業が時々出現する。最近の好事例はエヌビディア(ティッカーコードは「NVDA」)である。 株式に興味があれば、最近のニュースにはほぼ毎日エヌビディアが登場するから、「ああ、あの企業」となろう。業績の急成長にともない、株価も急速に上昇した(下図)。
この原稿を書いている2024年5月末現在(株式の10分割の直前)、エヌビディアの時価総額は2.7兆ドル(424兆円)である。グーグルを抱えるアルファベットやアマゾンをあっという間に抜き去り、今やマイクロソフトやアップルに肉薄して世界のトップ企業群に入った。 上がりすぎかもしれないものの、少し前、誰がこの急成長を予想しただろうか。 ● 近年もエヌビディア株を 安く買うチャンスはあった 筆者はパソコンの中にグラフィックボードが入っていることと、その大手メーカーに2社あり、それぞれ製品名としてGeForceとRadeonがあることは知っていた。とはいえ、その重要性には気づかなかった。 単純にバソコンのモニター上で画像を迅速に映し出す程度のものとしか認識せず、インテルのほうがパソコンにとってはるかに重要だと思っていた。 今から考えるとエヌビディア急騰の前兆があった。2016年、アルファ碁が当時の世界最強者を破り、囲碁界だけでなく、未来学者までをも仰天させた。ただし、その背後にグラフィックボードの主要部品であるGPU(Graphics Processing Unit)があるとは、その世界のプロぐらいが認識した程度だろうか。