センバツ2022 市和歌山、守り切った 花巻東に真っ向勝負 /和歌山
先輩超えへ、まず1勝―。2年連続センバツ出場の市和歌山は23日、1回戦で花巻東(岩手)と対戦し、5―4で競り勝った。先制を許したが、犠打を交えて走者を確実に進める攻撃で、得点を積み重ねて逆転。最終回、強打の相手に追い上げられるも守り切った。2回戦は大会第8日(26日)の第2試合(午前11時半開始予定)で明秀日立(茨城)と対戦し、昨年を上回るベスト8進出を目指す。【橋本陵汰、加藤敦久、山口一朗】 最後に相手より1点多かったらいいかなと。失点を覚悟しながらも、僅差で勝ちたい――。破壊力のある打線を誇る花巻東との対戦前、半田真一監督が思い描いていた通りの勝利となった。 初回、米田はいきなり無死一、二塁のピンチを迎える。しかし、ここで相手の注目打者・佐々木、続く田代を連続三振。次打者に先制打を許したが、最少失点で切り抜けた。 二回、半田監督が打のキーマンに挙げた寺田が右翼線の三塁打を放つと、田嶋の右犠飛で同点に追いついた。母寿子さん(46)は「バッティングの調子が良くないと言っていたが活躍できて良かった」と喜んだ。 三回は先頭の白木が右前打で出塁すると、熊本が絶妙なバントを決め、内野安打になった。松村が送って1死二、三塁の好機をつくり、堀畑がバントの構えで相手投手の暴投を誘って勝ち越した。更に堀畑と寺田の適時打で追加点を挙げ、突き放した。鍵を握る選手にふさわしい活躍に、寺田の母しおりさん(33)は「チームの力になれてうれしい」と誇らしげだった。 五回、米田はこの日3回目となる佐々木との対戦を迎えた。「近めの速いボールで詰まらせる作戦でいった」との言葉通り、全て直球の真っ向勝負で、最後の球速表示は145キロ。どん詰まりの三塁小フライに打ち取った。初回に乱れた制球も定まり、直球の切れがさえ渡った。父隆英さん(51)は「相手の3、4番をしっかり抑えられているところが大きい」と雄姿を見守っていた。 相手に流れを渡さない市和歌山は六回、「枠に来た球を一球でとらえる練習をしてきた。その成果が出た」と、ここでも寺田が左中間への二塁打で出塁すると、きっちり森が送り1死三塁。続く田嶋の中前適時打で、大きな5点目を挙げた。監督から発破をかけられたといい、「思い切っていった」と田嶋は振り返った。 ただ、強打の花巻東は、このままでは終わらなかった。九回、連続長打や犠飛などで1点差に迫ってくる。なおも2死二、三塁。一打逆転という場面になったが、米田は臆さなかった。「思い切ってストレートを投げ込んだ」と、ここでも真っ向勝負で最後の打者を左邪飛に打ち取った。 強打者にもおびえない、バッテリーの強気の攻め。内野安打になったものを含め、四つのバントは全てファーストストライクで成功――。重圧に負けないようにと積み重ねてきた練習の成果を、十二分に発揮した勝利だった。 ◇音圧で選手後押し 向陽高生や卒業生、助っ人に 吹奏楽応援 市和歌山の甲子園のアルプススタンドにも、吹奏楽の生演奏が帰ってきた。今回、市和歌山の吹奏楽部員に加え、卒業生や向陽の吹奏楽部員も友情応援に駆け付け、その音圧やハーモニーで選手たちを後押しした。 先制され迎えた二回1死三塁の好機では、三塁側アルプススタンドからチャンステーマ「レッツゴーICHIKO」が流れ、すぐさま同点に追いついた。 昨年もセンバツに出場した市和歌山。ただ、生徒らがアルプススタンドで応援することはできたが、新型コロナウイルスの影響で吹奏楽部の演奏は禁じられた。代わりに事前に収録した音源を用い、応援するかたちだった。 市和歌山の吹奏楽部員にとって、今回が初めての野球応援となった。原せきな部長は「緊張すると思ったが、わくわくして楽しさの方が大きい」と甲子園の雰囲気を満喫。「『今日勝てたのは、吹奏楽部の応援があったから』となってくれたらうれしい」と笑顔を見せていた。【橋本陵汰】 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇「小さな巨人」躍動 堀畑樹選手(3年) 「小さな巨人」が大きな甲子園で躍動した。 三回1死三塁、二塁方向に打球を転がすと、一塁へヘッドスライディング。内野安打にし、打点を付ける気迫を見せた。七回にも中前打を放ち、4打数2安打と活躍した。 二塁手を務め、「ノーエラー」を目標にしている守備も安定していた。指折りの強打者も含め、左打者がずらりと並ぶ花巻東打線だが、「速い打球を想定して守り、足を運んで取ることも意識した」と、この日五つのセカンドゴロを落ち着いてさばいた。 小さな気遣いも忘れなかった。九回、連打を浴びるなどして追い上げられ、米田が打者を意識し過ぎているとみるや一呼吸置きにマウンドへ行った。「周りを見ろ」。そして、「やってきたことに自信を持って楽しめ」。 身長157センチ、体重61キロ。高校球児としては小さい方で、好きな言葉が「小さな巨人」。甲子園に出て「全国の人に、小さな体でもできるんだということを見てもらい、大きな夢や希望を持ってもらいたい」との思いを抱いていた。その思いを、しっかりプレーで証明し、存在感を発揮した。更なる活躍で、体の小さい野球少年にも勇気を与えるつもりだ。【橋本陵汰、加藤敦久】