生理、LGBT問題、原爆…朝ドラ『虎に翼』数々のタブーにNHKが挑戦しなければならない本当の理由
しかし、放送法で「NHKの受信料については、国会が収支予算を承認することで決定する」と定められているため、国会尋問で受信料の使途に関して糾弾されることがある。だから、「税金の使い道を正されている」と誤解する人がいるのだ。NHKは「国営放送」ではない。そのことを十分に理解したうえで、今回の『虎に翼』におけるNHKの意図を分析する必要がある。 今回、NHKで長年、番組を作り続けているクリエイターに話を聞いた。その人物はきっぱりとこう断言した。 「NHKでも、視聴率を『気にする番組』と『気にしない番組』があります」 そして、「朝ドラ」や「大河ドラマ」は高視聴率が求められる番組にあたると教えてくれた。 また、「視聴率が獲れなかった現場は二度と作らせてもらえません」とその厳しさについても言及した。いわばNHKドラマの「生命線」である「朝ドラ」や「大河ドラマ」は、視聴率を稼ぐ使命を背負っているのだ。 特に将来、受信料を担ってくれるだろう若者コア層に対しての訴求は必至である。そんななか、生理、LGBT問題などは若者、特に女性が関心を持つ普遍性を持っている。 NHKの広報部も「『生理』に関わる諸問題や情報は、多様な生き方が認められる社会実現にとって大切なこと」と述べるなど、訴求的効果を認識している。「平等」を訴えるという行為も、「格差社会」に反旗を翻すような爽快感がある。そんなふうに、視聴者、特に若者の共感を得るテーマを〝あえて〟計算して織り込んでいるのだ。 後編では、②の「地上波の単一の番組だけではコンテンツの運用が厳しくなってきたため」、③の「公共放送としてのステイタスを顕示するため」について解説する。 取材・文:田淵俊彦
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