生理、LGBT問題、原爆…朝ドラ『虎に翼』数々のタブーにNHKが挑戦しなければならない本当の理由
ここで指摘しておきたいことがある。それは、『虎に翼』にはこれまでの朝ドラと違い、明確なテーマがあるということだ。 朝ドラは、一般的には主人公(近年放送の多くは女性)の半生・生涯を中心にそれをとりまく家族や家庭を描いたホームドラマの体裁を取っている。「朝8時から」という放送枠も相まって、「気軽に、毎日、見られる」ということをモットーにしている。 だが、今回の『虎に翼』は少し異なる。「女性の半生を描く」という点においては変わりはないが、男女不平等、女性差別的な社会の現実を描き出している点において、かなりの〝社会派〟だと言える。 放送初回の冒頭から、それは印象づけられた。寅子が河原で泣きながら日本国憲法が書かれた新聞記事を読むシーンだ。それは、このドラマが14条第1項の「法の下の平等」を軸に、すべての人の平等を考えるストーリーとなることを示唆していた。 そのため当然のことながら、男女不平等をはじめとするさまざまな「不平等」や女性差別的な社会の現実が描かれることになる。そして、それらに対して寅子が弁護士や裁判官として闘うという構図となってゆく。 だが、なぜここまで「法の下の平等」を明確に打ち出し、生理、LGBT問題、原爆などこれまでの朝ドラではタブー視されてきたさまざまな社会問題を物語に織り込もうとするのだろうか。 そこには、〝NHKだからこそ〟の以下の3つの理由がある。 ①視聴率を気にするため ②地上波の単一の番組だけではコンテンツの運用が厳しくなってきたため ③公共放送としてのステイタスを顕示するため ◆視聴率を「気にする番組」と「気にしない番組」 まず、①の「視聴率を気にするため」。「NHKは視聴率なんか関係ないんじゃないの」と考える読者はいまやいないと思うが、再度確認しておくとHPでも「みなさまの期待に応えるという意味で、視聴率の高い番組を放送する努力も必要だと考えている」と述べているように、以前よりNHKは視聴率を気にするようになっている。 それは時代の流れとともにNHKに対するバッシングが激しくなっているからである。 不祥事が起こるたびに受信料不払いの声は再燃する。さらに人口減とテレビ離れといった「負のスパイラル」の加速でNHKの受信料収入の激減は留まることを知らない。非難の論調は「税金を使って何をしているのか」だが、NHKの収入源は受信料であって税金ではない。