米俳優組合、AIスタートアップと画期的な契約
米俳優組合(SAG-AFTRA)が、AIスタートアップのNarrativと画期的な契約を結んだことを明らかにしたと、米Deadlineが報じている。俳優のAI音声合成における権利を守りつつ、倫理的な利用を可能にする新たな基準を定めるもので、AIをめぐる労使交渉のモデルケースになりそうだ。 Narrativは、広告主向けに音声AIを活用した広告制作プラットフォームを提供するスタートアップだ。俳優があらかじめ音声合成の利用条件を登録しておき、広告主とマッチングする仕組み。AIを使って手軽に音声付き広告が作れる一方、出演料に相当する利用料が俳優に支払われるため、双方にメリットがある。 その際、Narrativは俳優の事前同意と公正な報酬の支払いを保証。俳優が希望条件を細かく指定し、個別の案件ごとに承認・拒否できる透明性の高いシステムも整える。 SAG-AFTRAはこうした「AIの重要な歯止め」となる契約条件を評価。ダンカン・クラブツリー・アイルランド執行委員長は「全ての俳優に関心があるわけではないが、参加したい人には安全な選択肢になる。AIを倫理的に利用する優れた事例だ」とコメントしている。 SAG-AFTRAにとって、AIの台頭は昨年来の大きな懸案だった。クラブツリー・アイルランド氏は「AIをどう規制するかは今後の重要テーマ。同意と報酬の確保を大前提にする必要がある」と力説。Narrativとの契約が業界のルール作りを前進させる先行事例になると期待を寄せる。 AI企業からも今回の契約を評価する声が上がる。ローカルCM制作のAIツールを手掛けるWaymarkのアレックス・パースキー=スターンCEOは「人間の創造性を拡張するツールとしてAIを活用し、雇用を奪わない。そんな倫理的なAIの利用法を示す画期的な一歩」と話している。