コンビニは社会インフラ 買収提案を受けるセブン&アイの行方は…
ファミリーマートでは、全国のおよそ1万店舗に設置されているデジタルサイネージ「FamilyMartVision」を活用。2024年7月には大塚製薬や東京都、大阪府など30都府県と協力し都道府県ごとの熱中症対策啓発動画を放映。8月に台風10号が発生した際には、停電、災害に対する備蓄の呼びかけなどを行った。
●買収提案受けるセブン&アイ・HD
このように、社会インフラでもある日本のコンビニだが、「セブン-イレブン・ジャパン」の親会社、セブン&アイ・ホールディングスは、大きな転換点を迎えている。 ◇外資による買収提案 2024年8月、カナダを中心に展開するコンビニ大手「アリマンタシォン・クシュタール」社から6兆円弱規模の買収提案を受け、社外取締役のみで構成する特別委員会を立ち上げた。9月にはクシュタール社に対し、「株主価値向上について、著しく過小評価している」「セブンの株主や関係者にとって、最善の利益となる提案ではないと判断した」などとする書簡を送っている。クシュタール社は「買収資金には自信があり、資金のことは交渉に応じない理由にならない」などと応酬。10月には買収金額をおよそ7兆円まで引き上げた。 ◇セブン側の動き 一方、セブン側では、創業家を中心とする経営陣らによる自社買収=MBOが検討されている。メガバンクなどから出資を得る方向で検討していて、出資者には伊藤忠商事の名前も挙がっている。 セブン&アイの特別委員会委員長兼取締役会議長であるスティーブン・ヘイズ・デイカス氏は、「全ての選択肢を客観的に検討」しているとコメントしている。 買収騒動の行方はどうなるのか? 小売業界に詳しいSBI証券シニアアナリスト田中俊氏は、「現時点では創業家によるMBOが一番実現可能性がある」と見る。(1)比較的穏便に進みやすい(2)資金面はかなり大変だが、すでに名前が出ている会社(伊藤忠商事など)も含めて、出資する企業がありそうだ、というのが理由だ。ただ、多額な資金が必要となるため、他の事業の売却や「アメリカのセブン-イレブン・インクだけクシュタールに売却する」など、選択肢はいろいろあるとしている。 *** 毎日の食品や生活品の販売だけでなく、公共料金の支払いや荷物の配送、災害時の支援など「社会インフラ」の役割を果たす日本のコンビニ。セブン&アイを悩ませている問題の結末は、国民生活に影響を及ぼす可能性もある。日本の小売りをリードする企業であるセブン&アイの結論には重大な関心が集まる。