40周年を迎えた岸谷 香「この先もこれでいい」20代から変わらぬ音楽への思いを再発見
9年ぶりのニューシングルはコライトで制作
――2024年7月24日に、EDMやハウスの音楽要素を取り入れた9年ぶりのシングル「Beautiful」をリリースされます。今回、共同で音楽を制作する“コライト”をされていて、歌詞はプリプリメンバーだった富田京子さんと、曲はYusei Kogaさんと組んでいますね。 そう。もともと娘の仲良しグループのひとりが音楽をやっていて、コライトの存在を教えてもらったことがきっかけで、面白そうだなって興味を持ちました。その頃、K-POPにもハマっていて、「NewJeans」を好きになって。彼女たちの楽曲のクレジットを見ると、メンバーの名前も入っているけど、同時にたくさんの人の名前もあったり。いまの時代はコライトが主流なのかな、私もやってみたいなと、レコード会社のスタッフに相談しました。 いままで40年間、孤独にほぼひとりで曲を作ってきたから、今回初めてトラックメイカーという職種のかたとお仕事させてもらうことになったわけです。コライトはすごく楽しくて、音域も過去にないぐらい広いのでカラオケで歌いやすいかはわからないけど(笑)、すごく刺激になって、盛り上がりました。 ――「Beautiful」の振り付けをパパイヤ鈴木さんにご依頼されていますね? そもそも鈴木くんは高校の同級生で、近年また連絡を取るようになったんです。以前、ライブの次の日に会ったときに、首や肩が痛くなるんだけど、ずっと応援してくれてライブに来てくれるファンのかたも体がつらいかもしれないよね、と話していて。本格的な踊りじゃなくて、ラジオ体操の音楽版みたいなダンスはできないのかなって相談したら、「できるよ」って言うから、「やろう」と。それで曲を書いたら連絡するつもりが、時間が経ってしまって。今回「Beautiful」ができたタイミングで連絡して、「じゃあNewJeansみたいな振り付けにしてよ」と言ったら「オッケー!」となりました。 ――今回はコライトの新曲ですが、もともとおひとりで曲作りされる際は、どんなときに曲が生まれるのですか? さまざまですけど、楽しいときや心が躍ったときに曲が生まれることが多いから、旅行に行く際は絶対に五線紙を持っていくんですよ。あとはその逆に、悲しいときや、見たことのない景色を見たときも曲が生まれて。まあ、たとえ五線紙がなくても、思いついたら何にでも書いちゃうんですけども(笑)。そして書なきゃ、と意識して書くときもあります。曲はそうして生まれますが、歌詞を書くのはあまり好きではないので、だいたいいつも後回しにしていますね。 ――現在「KAORI KISHITANI 40th Anniversary LIVE TOUR 2024 “57th SHOUT!”」と題して、プリプリのアルバム1枚をセルフカバーするという、周年ならではの特別ツアー中ですね。さらに9月からは「KAORI PARADISE 2024」と題したひとりの弾き語りツアーを開催と、いろいろなスタイルで年間ライブをされています。 バンドツアーと弾き語りツアーは私の二大柱です。どちらか片方だけのライブになると私じゃない感じがして。両方あっての私ですし、“岸谷 香というアーティストはどういう人?”と言われたら、人と違う特徴がこの「二足のワラジで歩いています」というところだと思っています。 ――実際、ツアーの手応えはいかがですか? プリプリのアルバムをまるごと1枚の企画は、スタッフから提案されて、最初は躊躇していました。新曲も出していますし、いまのバンドUnlock the girlsでやりたいこともいっぱいなのにと。ただプリプリを解散してから、1回も当時のアルバムを聴いていないから、この機会にまた聴いてみようかなと思ったんですよね。そこでプリプリのとあるアルバムを聴いたら、さっき「二足のワラジで歩いています」と言いましたが、そんな二つの支柱を持ってライブを重視してやらなきゃと思ういまの気持ちと同じく、当時のアルバムのなかにも信念を持って音楽をやっていて絶対に届けたいとがんばる20代の自分を感じました。 そしたら、すごくうれしくなっちゃって。そういうところが変わらずにいられて、この40年、まわりで支えてくれるスタッフやファンのかたのおかげもあって、本当にいい時間を過ごすことができたんだなとあらためて実感しました。だから、いまもう1回、プリプリ時代のアルバムの曲をまた歌ってみようと思えて。いままで本当にやりたいことだけをやって、あとから後悔するような仕事や音楽の仕方はしてきていないんですが、それは間違っていなかった。これから先も、これでいいんだなと思えたのは、40周年の私にとってはものすごく大きな収穫でした。