北アルプスで新たな「氷河の可能性」 白馬沢雪渓で厚さ30メートル、長さ400メートルの塊が動いたデータ確認
白馬山案内人組合(長野県北安曇郡白馬村)や新潟大(新潟市)などでつくる「白馬連山氷河調査団」(団長=同大理学部・奈良間千之(ちゆき)教授)が、北アルプス白馬連峰の白馬沢雪渓(同村)について「氷河」である―との計測データを得たことが分かった。白馬沢雪渓を含めて村内にある雪渓四つ全てが、氷河である可能性が高まった。 【地図】長野県白馬村の北アルプスで氷河の可能性があるとされた雪渓の場所はこちら
観測機器の進歩に伴って北アルプスでは近年、国内の氷河全7カ所が相次いで確認されている。奈良間教授(52)=自然地理学=は、「消滅する雪渓は継続的な調査はできないが、氷河なら気候変動に伴う山岳環境の変化を長期的に監視できる」と指摘。今回の発見について、北アルプスで氷河が形成、維持される仕組みの解明に役立つだけでなく、観光や教育の分野でも活用できる―と話している。
国内の氷河を巡っては2012年、北アルプス立山連峰(富山県)の御前沢(ごぜんざわ)雪渓が氷河と初確認。18年には大町市や信州大(本部・松本市)の調査団が県内で初めて、カクネ里雪渓(大町市)を氷河と突き止めた。また、19年に奈良間教授らの調査団によって唐松沢雪渓(白馬村)が氷河と分かった。
同教授は23年12月、白馬連峰の杓子(しゃくし)沢雪渓(同)と不帰(かえらず)沢雪渓(同)は氷河―との論文を地球科学研究の国際雑誌に提出。受理されればこの二つの雪渓は国内8、9カ所目、県内3、4カ所目の氷河となる。
白馬沢雪渓では21年8月に調査。地表の観測機器から電磁波を放ち反射波が戻るまでの時間と強度から雪渓の深さと底部の形状を計測した。厚さ最大約30メートル、長さ約400メートルの巨大な塊の存在を確認。さらにポールを埋め込み、位置をGNSS(全球測位衛星システム)の通信機器で測量したところ、22年9月~今年10月の約2年間で約2メートル動いたことが分かった。今後、論文としてまとめる。
雪が解けずに残った雪渓に対し、氷河は巨大な雪氷の塊が長期間、傾斜に沿って流動している。同教授によると、白馬村内四つの雪渓は標高2千メートル前後の比較的低い場所に分布。雪崩で多くの雪を涵養(かんよう)できる環境が氷河の形成や維持に大きく影響しているとみられる。