コロナワクチンは結局効果があったのか、なかったのか。ネットに膨大に流れる情報や意見を自分なりに理解するために必要な最低限の知識
大事なのは重症化・死亡を防ぐこと
と、その前に。 ここまでは、「コロナ感染を防ぐかどうか」という観点から「有効性」を吟味しました。厳密には「症状のあるコロナ感染を防ぐかどうか」という論文を検証してきたのですが……。 しかし、もっと大事なのは「重症化を防ぐかどうか」です。これを吟味する場合は、例えば「入院するかしないか」「死ぬか死なないか」という、より重要なテーマで研究がなされます。 イスラエルで行なわれた巨大な観察研究だと、ファイザーのmRNAワクチンはコロナによる入院を97.2%減らしました。また、重症(集中治療室での治療を必要とするなど)例は97.5%、死亡は96.8%減らしました。mRNAワクチンは、コロナでの重症患者や死亡を劇的に減らしたのです(*4)。 僕らは2020年12月から2021年3月にかけて、野生株とアルファ株の重症度を神戸市の患者で比較しました。アルファ株のほうが死亡率は高い傾向にあって、12%、野生株では8%でした。 両者の違いはここでは重要ではありません(統計的にも有意差はありませんでしたし)。大事なのは「1割近くの死亡率」があったという事実です。この時期は、患者さんには新型コロナワクチンはまだ提供されていませんでした。そして、コロナになったら全員入院できていた(しなければならなかった)時代でした。爆発的に患者が増えて、自宅やホテルで療養……などとなったのは、もっとあとの話です。 で、当時は1割くらいの患者さんが死亡していたのですね。ワクチンのなかった時代のコロナは本当に恐ろしかったのです。 こういうのはすぐに皆忘れちゃうので、ちゃんと論文にしてデータを残しておくのが大事なのです。もちろん、コロナは「風邪」なんかじゃなかったのです(*5)。さて、ワクチンは他人への感染も減らします。オランダの研究では、家庭内での濃厚接触者で、ワクチン接種者と非接種者では、感染は71%減りました。3割くらいの感染が、1割くらいの感染に減ったことになります(*6)。