「FPGAの新パラダイム」 半導体新市場、エッジAIで拓く 米エフィニックス
末端の機器でも動作するエッジAI(人工知能)が半導体の新市場を拓こうとしている。大きな影響を見込む分野の1つが、利用する側が回路構成を変更可能な集積回路「FPGA」だ。FPGA新興の米エフィニックスを創業したサミー・チャン最高経営責任者(CEO)は、エッジAIがもたらす変化の先を「新たなパラダイム(枠組)」と表現する。 【関連写真】取材に応じたサミー・チャンCEO 同社は20~22日、パシフィコ横浜〈横浜市西区〉で開催されるエッジAI関連の展示会「エッジテックプラス2024」に出展。チャン氏は21日に会場でFPGAの新パラダイムなどを主題に講演するのに先立ち、19日に東京都内で取材に応じた。 FPGAは、ユーザーが回路の設計変更や試行錯誤をしやすく、不具合が見つかっても後から修正できる柔軟性を備える。特定の機能に適したロジック半導体を比較的短期間に開発できるとして産業用をはじめ幅広い需要を獲得している。 チャン氏は同分野で35年の経験を持ち、米大手のアルテラなどを経て2012年にエフィニックスを創業。小型、高電力効率と処理性能を両立した製品を得意とし、最近は強みを生かせるエッジAIに注力する。26年後半によりエッジAIに最適化した製品投入も計画しており、25年中ごろに詳細を公表予定だ。 同社は24年時点で世界1000社超、日本でも100社超の顧客を持ち、そのうちエッジAIに興味を示すか実際に活用している割合は10%を占める。28~29年には50%の構成に増えることを見込んでおり、産業用カメラなどで広がってきたエッジAIの導入が、別分野でも進むとにらむ。 FPGAは必要に応じて多様な回路を構成でき、CPUの機能まで持たせられる。一方、エッジAIで使う場合、「1つの半導体で完結することはない」(チャン氏)といい、外部の半導体やシステム全体との連携が重要となるため、日本でもさまざまな企業とのエコシステム(生態系)構築に注力する方針だ。エッジAIでもオープンソースの命令セット「RISC-V」を採用したCPUの存在感が高まるとみて、関連技術を持つ相手とつながることも期待する。 今回のエッジテックプラスでは、16ナノメートルプロセスで製造した高性能FPGA「タイタニウム」の1つである「Ti375」を使い、人物検知AIが動作する様子などを披露。東芝情報システムや日立産業制御ソリューションズ、加賀デバイスなど合計10社とともに展示を行う。
電波新聞社 報道本部