運転免許証を自主返納したら、“身分証明”はどうなる? プロが教える手続きの流れ
昨今、高齢のドライバーによる自動車事故が問題視されています。高齢期に入った親の運転に、不安を抱かれている方も多いのではないでしょうか。本稿では、モビリティ・ジャーナリストの楠田悦子さんに「免許証返納」について、詳しく聞きました。 ※本稿は、『PHPくらしラク~る♪』2024年5月号より、一部を抜粋編集したものです。
熟練が油断を引き起こす事故の原因は「考え事」
高齢ドライバーの事故が報道されるたび、話題になる「運転免許証の自主返納」。親や兄弟など、周囲に高齢者がいる方の中には、今まさに免許証を返納するよう説得している、という方もおられるのではないでしょうか。 アクセルとブレーキの踏み間違いや、高速道路の逆走など、事故の要因になりうる「ヒヤリハット」の瞬間はさまざま。 2022年の『警視庁交通総務課統計』では、年間約3万件の交通事故発生件数のうち、約4,500件が65歳以上の高齢ドライバーによるものと発表されており、事故を起こした理由の8割以上は「脇見や考え事をしていたことなどによる発見の遅れ」でした。運転歴が長く、熟練しているからこそ油断が生じるのかもしれません。
強要するのはNG...納得したうえでの返納を
医療技術の発展によって、高齢者と思えないほど若く、元気な人も増えてきましたが、視力や筋力、認知機能やとっさの判断力などは、加齢に伴い低下していきます。悲惨な事故を起こしてしまう前に自主返納してほしい、という周囲の気持ちは日に日に強くなるばかりでしょう。 しかし、免許取得から今に至るまで無事故・無違反で自分の運転技術に自信を持っていたり、そもそも車に代わる移動手段がなかったりと、高齢ドライバーにも自主返納をためらう理由があります。 また、無理やり免許証をとりあげてしまったことで、無力感から引きこもりがちになり、認知症につながってしまったという例もあります。ドライバー自身が納得したうえで手続きができるように、返納をためらう気持ちに寄り添いながら、じっくりと話し合うことが必要です。 次の項目からは、運転免許証の自主返納をためらう理由ごとに、周囲ができるサポートや説得の方向性などを紹介します。今、これを読んでいるみなさんも「いつか自分自身のことになる」と考えるきっかけにしてください。